特定整備の認証の取り方|電子制御装置整備の講習・設備・スキャンツール・申請書類

特定整備の認証とは、従来の分解整備と、2020年4月1日に加わった電子制御装置整備をまとめた「自動車特定整備事業」の認証のことです。前方カメラ付きのガラス交換やバンパ脱着、エーミングを仕事にするなら、分解整備とは別に電子制御装置整備の認証が要ります。独立を考えている整備士にとっては、最初から両方を取るか、分解整備で始めて後から追加するかを選べる制度です。国土交通省は講習テキストや問答集を公開しており、何を準備すればよいかは資料を読めば一通りわかります。この記事は「整備工場の開業・認証」シリーズの一つとして、特定整備の認証の取り方を扱い、電子制御装置整備の講習、設備、申請書類を国交省資料で確認します。
この記事で確認した一次情報
- 特定整備制度(国土交通省)制度の概要、講習の案内、整備用スキャンツールの情報
- 特定整備制度に関するよくある質問・問答(国土交通省)ターゲット、スキャンツール、申請先、整備主任者
- 自動車特定整備事業 認証取得説明用資料(近畿運輸局)電子制御装置整備のみの申請書類とチェックシート
特定整備の認証とは(2020年4月1日に始まった制度)
特定整備の認証とは、道路運送車両法第78条に基づき地方運輸局長から受ける自動車特定整備事業の認証で、2019年5月24日公布の改正法により従来の「分解整備」の範囲を広げて2020年4月1日に始まりました。施行規則第3条は、第1号から第7号を分解整備、第8号と第9号を電子制御装置整備と呼び、両方をまとめて特定整備と定義しています。国土交通省の特定整備制度概要は、認証のパターンを分解整備のみ、電子制御装置整備のみ、両方の3つと想定し、いずれも自動車特定整備事業者だと説明しています。既に分解整備の認証を持つ工場は、問答集の問4のとおり分解整備を続けるだけなら手続きは要りません。電子制御装置整備を始めるときに、新たにその認証を受けます。認証を受けずに特定整備の事業を経営すると、法第109条により50万円以下の罰金の対象です。
| 認証のパターン | できる作業 | 向いている工場の例 |
|---|---|---|
| 分解整備のみ | 原動機、動力伝達装置、ブレーキ、足回りなどの取り外しを伴う整備 | 一般整備と車検整備が中心の工場 |
| 電子制御装置整備のみ | 前方カメラやレーダーの脱着と調整、それらが付いたガラスやバンパの脱着、エーミング | ガラス修理業、車体整備業 |
| 分解整備と電子制御装置整備の両方 | 上の両方 | 幅広い入庫を受けたい整備工場 |
電子制御装置整備の対象作業と対象車両
電子制御装置整備の対象作業は、施行規則第3条第8号と第9号に書かれています。第8号は、前方の状況を検知するセンサー、その情報を処理する電子計算機、センサーが取り付けられた車体前部又は窓ガラスの取り外し、取付位置や角度の変更、機能の調整のうち、かじ取り装置又は制動装置の作動に影響を及ぼすおそれがあるものです。第9号は自動運行装置の整備や改造です。国土交通省の問答集は具体的に、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープ機能に使う前方カメラ等の脱着や機能調整、それらが付いたバンパ、グリル、窓ガラスの脱着を挙げています。センサーが付いていないガラスやバンパの脱着は該当しません(問2)。対象になるのは、その装置が保安基準の適用を受けている自動車で、型式から判別できるよう自動車メーカー作成のリストが国土交通省のページで公表されています(問3)。
- 対象になる例:前方カメラ付きフロントガラスの交換、ミリ波レーダー付きバンパの脱着、カメラ交換後のコーディングや静的エーミング
- 対象にならない例:センサーの付いていないガラスやバンパの脱着、ターゲットを使わない動的エーミングのみの作業、自動エーミングのみ
- 注意:動的エーミングのみで調整できる車でも、カメラの交換などを伴えば対象(講習テキスト)
カメラ付きガラスを脱着したあとは、エーミング作業が必要です(問13)。静的エーミングと動的エーミングの違い、外注との使い分けはエーミング・特定整備の記事で詳しく扱っています。
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電子制御装置整備の整備主任者と講習
電子制御装置整備の整備主任者になれるのは、一級の自動車整備士(一級二輪を除く)か、一級二輪、二級、自動車車体整備士、自動車電気装置整備士の資格を持ち、運輸支局長等が行う「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」を修了した人です(施行規則第62条の2の2第1項第7号ロ)。分解整備と両方を行う事業場では、一級(二輪を除く)か、一級二輪又は二級で講習を修了した人に限られます(同号ハ)。国土交通省の特定整備制度のページは、一級小型自動車整備士の有資格者は受講が免除されると案内しています。講習は学科、実習、試問で構成され、実習は運輸支局等が認定する地方の自動車整備振興会等の機関で行われます(問11)。開催日は運輸支局ごとに決まるため、最寄りの運輸支局に問い合わせます。講習テキストは国土交通省のページから誰でもダウンロードできます。
| 持っている資格 | 電子制御装置整備のみの事業場 | 分解整備と両方の事業場 |
|---|---|---|
| 一級自動車整備士(一級二輪を除く) | 講習なしで整備主任者になれる | 講習なしで整備主任者になれる |
| 二級自動車整備士、一級二輪 | 講習修了で整備主任者になれる | 講習修了で整備主任者になれる |
| 自動車車体整備士、自動車電気装置整備士 | 講習修了で整備主任者になれる | 整備主任者の資格要件に含まれない |
分解整備の整備主任者と電子制御装置整備の整備主任者を別々の人で選任できません(問12)。両方を取るなら、両方の要件を満たす1人を整備主任者にします。整備主任者の基本は整備主任者になるにはで確認できます。
電子制御装置整備の設備(作業場、水準器、スキャンツール)
電子制御装置整備の設備の要件は、電子制御装置点検整備作業場と車両置場、水準器と整備用スキャンツール、そして整備に必要な情報とエーミング機器を入手できる体制の3つです。作業場の寸法は施行規則別表第四で、普通自動車(乗用)と四輪の小型自動車は間口2.5メートル以上、奥行6メートル以上、そのうち屋内部分が間口2.5メートル以上、奥行3メートル以上と定められています。国土交通省の概要資料によると、屋内の間口はエーミングに必要な寸法と自動車の全幅、作業スペース0.5メートルを、奥行は前部付近の作業スペース2メートルを考慮した数値です。近畿運輸局の資料は、電子制御装置整備のみの認証で必要な作業機械等を水準器と整備用スキャンツールの2点としています。スキャンツールは1車種以上でOBD検査の対象装置の点検と整備ができる性能があればよく、エーミング用ターゲットは保有せず借用や共同保有でも構いません(問6、問7)。
| 対象とする自動車(別表第四) | 電子制御装置点検整備作業場の規模(間口×奥行) |
|---|---|
| 普通自動車(車両総重量8トン以上など) | 5m×16m以上で、うち屋内は5m×7m以上 |
| 普通自動車(最大積載量2トン超など) | 3m×13m以上で、うち屋内は3m×7m以上 |
| 普通自動車(貨物用、特種用途) | 2.5m×7m以上で、うち屋内は2.5m×3m以上 |
| 普通自動車(乗用)、小型四輪、小型三輪 | 2.5m×6m以上で、うち屋内は2.5m×3m以上 |
| 軽自動車 | 2m×5.5m以上で、うち屋内は2m×4m以上 |
敷地が足りない場合の方法も用意されています。国土交通省の指導要領は、事業場から車でおおむね1時間以内の位置にある離れた作業場を事業場の一部として扱えるとし、他の事業者の電子制御装置点検整備作業場と車両置場を契約書で共同使用することも認めています(問8)。情報の入手体制は、整備要領書や、日本自動車整備振興会連合会(日整連)の整備情報提供システムFAINESなどで示します。日整連はFAINESを、整備マニュアル情報や故障整備事例、回路図、点検基準値などを会員登録してインターネットで閲覧できる仕組みと紹介しています。設備の選び方全般は設備・工具一覧にまとめています。
特定整備の認証の申請先と必要書類
特定整備の認証の申請先は、事業場を管轄する運輸支局の整備部門です(問10)。書類は近畿運輸局の認証取得説明用資料に一覧があり、認証新規申請書、整備主任者選任届、整備士合格証書や講習修了証の写し、申請者を特定できる書面、事業場の所在を証する書面が基本になります。申請者が個人なら住民票の写し(個人番号の記載のないもの)や個人番号カードの写し等、法人なら商業登記簿謄本で、どちらも発行後3か月以内のものが求められます。事業場の所在は土地又は建物の登記簿謄本や建築物の確認済証の写しで示し、地番と住居表示が違う場合は住居表示確認書を付けます。離れた作業場を使うなら土地の使用に係る契約書、共同使用なら共用設備に係る書面も必要です。書類審査に合格すると現地調査があり、各作業場と車両置場を白線などで囲み、工具を作業場に並べておくよう案内されています。
| 書類(近畿運輸局の一覧) | 要る場面 |
|---|---|
| 自動車特定整備事業の認証新規申請書(第1号様式) | 全員。工員の構成、宣誓書、作業場の寸法、作業機械等、情報入手体制、平面図を記入する |
| 整備主任者(選任・変更)の届出書(第4号様式) | 全員 |
| 自動車整備士合格証書、講習修了証の写し | 整備主任者と、整備士資格を持つ工員全員の分 |
| 住民票の写し等、又は商業登記簿謄本 | 個人か法人かで選ぶ。発行後3か月以内 |
| 登記簿謄本や建築確認済証の写し、住居表示確認書 | 事業場の所在を示すとき |
| 工員名簿、事業場の写真 | その他必要な書類として求められる |
| 土地の使用に係る契約書、共用設備に係る書面 | 離れた作業場や共同使用をするとき |
様式の番号は近畿運輸局のものです。他の地方運輸局では様式の名前や番号が違う場合があるため、管轄の運輸支局の案内を確認してください。申請の手数料と処理期間は、この記事で確認した資料には記載がありませんでした。分解整備の認証を含めた全体の流れは認証工場の取得方法と流れで説明しています。
特定整備の認証を取ったあとに守ること
特定整備の認証を受けた事業者には、作業の記録と研修の義務が続きます。法第91条は特定整備記録簿を備えて、自動車登録番号、特定整備の概要、完了した年月日、依頼者の氏名と住所などを記載し、写しを使用者に交付し、記載の日から2年間保存することを求めています。施行規則第62条の2により、総走行距離、整備主任者の氏名、事業者名と事業場の所在地、認証番号も記載事項です。電子制御装置整備では、型式固有の技術情報に基づいて点検と整備をすること、エーミング作業が適切に行われるよう必要な措置を講じることが遵守事項に入っています(第62条の2の2第1項第5号、第6号)。整備主任者には毎年度、法令研修と技術研修を受けさせます。ガラス修理業者などに構内で作業してもらう場合は、自らの管理の下で行う旨の取り決めを書面で交わし、記録簿は外注元が書きます(問5、特定整備制度概要)。
- 特定整備記録簿を書き、写しを渡し、2年間保存する。
- エーミングは整備要領書など型式固有の情報に基づいて行う。
- 整備主任者の法令研修と技術研修を毎年度受ける。
- 構内外注は書面で取り決め、記録簿は自社で書く。
まとめ
特定整備の認証は、分解整備と電子制御装置整備をまとめた自動車特定整備事業の認証で、2020年4月1日に始まりました。電子制御装置整備を取る手順は、対象とする車種を決める、整備主任者の要件を確認して必要なら講習を受ける、電子制御装置点検整備作業場と水準器、整備用スキャンツールを用意する、情報とターゲットの入手体制を決める、運輸支局に申請する、の5段階です。スキャンツールは1車種以上に対応するもの1台、ターゲットは借用や共同保有でもよく、作業場は離れた場所や共同使用も認められているので、独立直後の小さな工場でも設備の負担を抑えて準備できます。一方で、講習の日程や申請手数料、審査期間は公式資料に統一の記載がありません。開業日を決める前に、管轄の運輸支局整備部門で確認してください。
特定整備の認証に関するよくある質問
- 特定整備の認証は、分解整備の認証を持っていれば自動的に付いてきますか?
- 付いてきません。国土交通省の特定整備制度に関するよくある質問・問答の問4は、分解整備の認証基準は変わらないため従来の事業を続けるなら手続きは不要だが、電子制御装置整備を行う場合は新たに電子制御装置整備の認証が必要だと答えています。
- エーミング用のターゲットは全部買いそろえる必要がありますか?
- 保有する義務はありません。同じ問答集の問6は、必要なときに入手する体制があれば保有する必要はなく、事業場間で共同保有する、必要な際に借りるといった形態でもよいとしています。申請書には入手体制を書きます。
- 整備用スキャンツールは全メーカー対応のものが必要ですか?
- 必要ありません。問7は、認証要件としては少なくとも1車種以上の車両を整備できるスキャンツールを1台保有していればよいと答えています。要件に合う製品は、国土交通省が案内する一般社団法人日本自動車機械器具工業会のページに掲載されています。
- 二級整備士ですが、講習を受けずに電子制御装置整備の整備主任者になれますか?
- なれません。二級整備士が電子制御装置整備を行う事業場の整備主任者になるには、運輸支局長等が行う整備主任者等資格取得講習の修了が必要です。国土交通省の特定整備制度のページは、一級小型自動車整備士の有資格者は受講が免除されると案内しています。
- 申請の手数料と、認証が出るまでの期間はどれくらいですか?
- この記事で確認した国土交通省と近畿運輸局の資料には、手数料の額と処理期間の記載がありませんでした。書類審査のあとに現地調査があると案内されているため、開業日から逆算する前に、管轄の運輸支局整備部門に確認してください。
- 独立した整備工場で、顧客・車両・整備記録の管理はどうすればよいですか?
- 販売する車の仕入れ値・整備費・売値、顧客の情報、注文書や保証書を1か所で扱えるのが車両販売システム(車販ソフト)です。整備も行う場合は自動車整備システム(自動車整備ソフト)とデータがつながるかを確認します。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、開業時の台数に合うかも確かめてください。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月4日確認)。
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索)第78条、第91条、第109条:https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 道路運送車両法施行規則(e-Gov法令検索)第3条、第57条、第62条の2、第62条の2の2、別表第四、別表第五:https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
- 国土交通省 特定整備制度:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr9_000016.html
- 国土交通省 特定整備制度概要:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001332203.pdf
- 国土交通省 特定整備制度に関するよくある質問・問答:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001388156.pdf
- 国土交通省 電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習テキスト:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001331469.pdf
- 国土交通省 自動車整備事業の取扱い及び指導要領:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001899927.pdf
- 国土交通省 電子制御装置整備の対象車両:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr9_Target_vehicle.html
- 近畿運輸局 自動車特定整備事業 認証取得説明用資料(電子制御装置整備のみの認証取得編):https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000246231.pdf
- 日本自動車整備振興会連合会 FAINES(ファイネス)とは:https://www.jaspa.or.jp/member/faines/guide01.html