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指定工場の監査と行政処分|工員・検査員が不足したとき、指定取消しの基準と事例

公開日:2026年10月17日

指定工場の監査と行政処分 工員や検査員が不足したときの扱いと指定取消しの基準、運輸局の公表事例

指定工場は、指定を受けた後も設備と人員を基準どおりに保つ義務を負い、運輸局の監査で守れているかを確かめられます。この記事では、指定工場の監査と行政処分について、工員や自動車検査員が不足したときにどう扱われるか、違反点数と処分の仕組み、指定取消しになる行為、運輸局が公表した取消し事例を、道路運送車両法、行政処分等の基準、日本自動車整備振興会連合会のマニュアル、運輸局のプレスリリースで確認します。退職や病気で人が欠けるのは小さな工場ほど起こりやすい出来事です。欠けたときに何点の違反になり、何をいつまでに届け出るかを先に知っておけば、慌てずに手を打てます。最後に、監査と処分に備える日頃の管理をチェックリストにまとめました。

指定工場の設備と人員の維持義務と是正命令

指定工場の維持義務とは、指定を受けたときの設備、技術、管理組織を、指定の基準に適合する状態に保ち続ける義務のことで、道路運送車両法第94条の3第1項が定めています。この設備には自動車の検査の設備も含まれます。同条第2項は、地方運輸局長が基準に適合していないと認めたとき、指定自動車整備事業者に是正のために必要な措置をとるよう命じられるとしています。これが是正命令です。行政処分等の基準によると、運輸局は口頭注意や取消し、解任命令を除く行政処分等をしたときに改善報告の提出を求め、事業者監査等で改善の状況を確認します。改善報告を求めた後も設備や技術、管理組織が改善されていない場合に是正命令が出され、その是正命令に従わなければ指定の取消しの対象になります。つまり、指定は一度取れば終わりではありません。工員の退職や機器の故障で基準を割り込んだ状態を放置すると、段階を追って重い処分へ進む仕組みです。

段階運輸局の対応(行政処分等の基準)
監査で違反を確認違反事項ごとに違反点数を付け、合計点数を出します。
行政処分等点数に応じて文書警告や交付停止命令などを行い、口頭注意の場合を除いて改善報告を求めます。
改善の確認事業者監査等で改善状況を確かめます。
是正命令設備、技術、管理組織が改善されていなければ命令が出ます。
指定の取消し是正命令に従わない場合は取消しの対象です。

指定工場の監査内容(点検票で確認される項目)

指定工場の監査内容は、日本自動車整備振興会連合会の「指定整備事業適正運営マニュアル」(平成24年7月)に載っている点検票の例を見るとつかめます。点検票は事業場全般、保安基準適合証、指定整備の内容、自動車検査員、指定整備記録簿、検査用機械器具、その他の7分野に分かれ、マニュアルには「この点検表については、監査時に確認を行います」と書かれています。事業場全般では、工員数と整備士保有率が最新の組織図と合っているか、平面図と現状が一致しているか、検査用機器が指定申請書の控えと同じかを照合します。適合証の分野では、交付権限の委任、出納の管理、施錠できる場所での保管に加え、検査員が休みの日に証明がされていないかを出勤簿で確かめます。検査用機械器具の分野は、1日1回の始業点検と定期点検の記録、校正の有効期間、校正結果成績表の保存が対象です。書類と現場と記録を突き合わせる監査だと考えて準備するのが近道です。

点検票の分野確認される項目の例(マニュアル参考資料)
事業場全般工員数と整備士保有率、平面図と現状、検査機器、管理規程の理解、標識の掲示を確かめます。
保安基準適合証交付権限、出納簿と交付台帳、施錠保管、検査員の出勤日との整合、自賠責の期間を確かめます。
指定整備の内容料金表と概算見積書、受入点検の記載、不適合車の復元、完成検査の記録を確かめます。
自動車検査員変更時の15日以内の届出、毎年の研修受講、検査の全過程を自ら行っているかを確かめます。
指定整備記録簿様式の選び方、適合証との整合、過去2年分の保管を確かめます。
検査用機械器具始業点検と定期点検の記録、校正の有効期間、管理責任者の任命を確かめます。
その他整備主任者の届出と研修、検査作業と整備作業の分業、社内教育の記録を確かめます。

監査を拒んだり、質問に虚偽で答えたりする行為は、行政処分等の基準で指定事業者は60点です。行政処分を受けた後に再び立入検査を拒否すると、指定の取消しの対象になります。

指定工場の工員が不足したときの扱い

指定工場の工員が不足したときは、行政処分等の基準の別表2で「工員が不足している」に当たり、違反点数は3点です。工員数は大型車を含まない場合4人以上、含む場合5人以上が基準なので、4人ちょうどで指定を受けた工場は1人の退職で基準を下回ります。同じ表には、整備士の保有数を確保していない場合3点、主任技術者を有していない場合3点も並んでおり、工員の退職で整備士の割合まで崩れると、違反事項が重なります。指定事業者の合計点数は9点以下なら累積点数に計上しない、と基準は定めていますが、点数が付くこと自体は変わりません。改善報告を求められても人が戻らなければ、前の節で見た是正命令の段階へ進みます。工員を補充できるまでの間の扱いについては、条文や基準に具体的な定めが見当たりません。退職の見込みがわかった時点で、管轄の運輸支局と振興会に状況を伝えて相談しておくのが安全です。

人が欠けたときの違反事項(別表2)違反点数
工員が不足している3点
整備士の保有数を確保していない3点
主任技術者を有していない3点
検査員がいない20点
検査員の届出、変更届出の未提出9点

工員の数え方には、見習工を含み、一時的に雇う人や請負の人は含まないという解釈があります。数え方の詳細は指定工場の条件一覧で整理しています。補充の採用については整備士不足の現状も参考にしてください。

指定工場の自動車検査員が不足したときの扱いと届出

指定工場の自動車検査員が1人もいない状態は、行政処分等の基準で違反点数20点で、それだけで保安基準適合証等の交付停止命令の基準である合計20点に届きます。道路運送車両法第94条の4第1項は、事業場ごとに検査員を選任するよう求めているからです。検査員が退職したり交代したりしたときは、同条第3項により、選任や変更の日から15日以内に地方運輸局長へ届け出ます。この届出を出していないと9点、虚偽の届出は20点です。選任されていない検査員資格者に証明させて適合証を交付した場合は、1台ごとに20点が付きます。検査員は原則として他の事業場の検査員を兼ねられず、他の事業者に兼任させていた場合も20点です。同じ事業者の別の事業場との兼任は、指定規則第4条の2の位置や業務量の要件を満たす場合に限って認められます。検査員が1人だけの工場は、休みの日に代わりに証明できる人がいないので、検査員の候補を2人目まで育てておくと運営が安定します。

検査員に関する違反事項(別表2)違反点数
検査員を他の事業者に兼任させていた20点
兼任先の事業場までの所要時間が常に1時間を超えていた3点
検査員の虚偽の届出、変更届出20点
検査員の証明がないのに適合証を交付(未選任の資格者に証明させた場合を含む)1台20点
検査員研修の未受講3点

道路運送車両法第94条の4第5項により、解任命令で検査員を解任された人は、解任の日から2年間は検査員になれません。検査員の教習や確保の方法は自動車検査員になるにはで扱っています。

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指定工場の行政処分の種類と違反点数の仕組み

指定工場に対する行政処分は、保安基準適合証等の交付の停止命令、指定の取消し、自動車検査員の解任命令、是正命令の4種類で、行政処分に至らないものとして口頭注意と文書警告があります。行政処分等の基準では、監査で見つかった違反事項ごとに違反点数を付けて合計点数を出し、合計が20点以上なら交付の停止を命じ、360点以上なら指定を取り消します。過去1年以内に行政処分等(口頭注意を除く)を受けた事業場は合計点数が2倍、1年を超え2年以内なら1.5倍です。違反を自主申告して改善できる場合や、過去5年間に処分歴がなく全般の改善が見込める場合は、合計点数が2分の1になります。ただし、違反が原因の事故が起きている場合や故意と認められる場合は半分になりません。合計点数は運輸支局単位で2年間累計され、指定事業者は1回の合計が9点以下なら累積に計上しないとされています。処分を受けた事業者の名称と処分内容は公表されます。

違反事項の例(別表2)違反点数
検査の設備が備えられていない3点
検査機器の校正の一部又は全てを実施していない6点
指定整備記録簿の虚偽記載30点
指定整備記録簿を2年間保存していない20点
点検整備の一部を実施せず適合証を交付1台10点
故意により検査の一部を実施せず適合証を交付1台10点
検査を全て実施せず適合証を交付1台45点
不正改造状態で適合証を交付1台45点(5台以上は取消し)

1台ごとに点数が付く違反は、台数が増えると合計点数が一気に膨らみます。仕組みの上では、故意に検査の一部を省いた車が36台あれば、それだけで360点に達します。

指定工場の取り消しの基準(指定取消しになる行為)

指定工場の取り消しは、行政処分等の基準の4(2)が12の場合を挙げており、合計点数が360点以上になった場合のほかに、点数にかかわらず取り消される行為が定められています。点数によらない取消しには、虚偽の指定申請や変更届出、5台以上の不正改造自動車への適合証の交付、点検整備と検査を全くせずに適合証を交付するいわゆるペーパー車検、5台以上の不正改造の実施、指定の廃止の未届出があります。是正命令、交付停止命令、検査員の解任命令のいずれかに従わなかった場合も取消しです。立入検査を拒否して処分を受けた後に再び拒否した場合も含まれます。さらに、社会的問題となる悪質な行為と判断されたときは、行政処分審査委員会の議を経て点数にかかわらず取り消せるとされています。検査員個人については、検査をしないで証明した場合や、保安基準に適合しない状態なのに証明した場合、不正改造をした場合などに解任命令が出ます。

  • 違反行為に係る事業場の合計点数が360点以上になった。
  • 虚偽の指定申請又は変更届出をした。
  • 5台以上の不正改造自動車に適合証等を交付した、又は5台以上の不正改造を実施した。
  • 点検整備と検査を全くせずに適合証を交付した(ペーパー車検)。
  • 指定の廃止を届け出なかった。
  • 是正命令、交付停止命令、検査員の解任命令に従わなかった。
  • 立入検査を拒否して処分を受けた後、再度拒否した。

指定工場の取り消し事例(運輸局の公表資料)

指定工場の取り消し事例として、2023年には関東運輸局と東北運輸局が、完成検査の一部を行わずに保安基準適合証を交付した事業場の指定を取り消したと公表しました。関東運輸局の2023年6月27日のプレスリリースによると、栃木県宇都宮市の事業場で、完成検査のうち速度計誤差の検査を58台について実施していなかったことが監査で確認されました。法令違反の主な内容は、故意により検査の一部を実施せず適合証を交付したこと(第94条の5第1項違反)と、指定整備記録簿の虚偽記載(第94条の6第1項違反)です。処分は指定の取消しと、自動車検査員2名の解任命令でした。東北運輸局は2023年7月6日、宮城県白石市の事業場について、排ガス検査を65台について実施しないまま適合証を交付し、指定整備記録簿にも虚偽の記載をしていたとして、指定の取消処分を公表しています。処分年月日は7月7日です。どちらも検査の一部を省き、記録簿でそれを隠した形です。

公表違反の概要処分
関東運輸局 2023年6月27日速度計誤差の検査を58台で実施せず、記録簿に虚偽記載をしていました。指定の取消し、検査員2名の解任命令
東北運輸局 2023年7月6日排ガス検査を65台で実施せず、記録簿に虚偽記載をしていました。指定の取消し

関東運輸局のプレスリリースは、適合証の交付の業務に従事する指定自動車整備事業者と役職員が、刑法その他の罰則の適用について公務に従事する職員とみなされるという第94条の7も参考に載せています。指定工場の責任の重さについては指定工場のメリット・デメリットでも触れています。

指定工場の監査と行政処分に備える日頃の管理

監査と行政処分に備える日頃の管理は、点検票の項目を毎月自分たちで点検し、記録を残すことに尽きます。人については、組織図を最新に保ち、検査員や整備主任者が変わったら15日以内に届け出ます。指定規則第14条により、検査員には毎年度の研修を受けさせます。機械については、始業点検を1日1回行って記録し、検査用スキャンツールを除く機器は前回の校正から1年以内に登録校正を受け、その記録を1年間保存するよう同第12条が定めています。記録簿は2年間、適合証の交付番号順に綴じて保管します。

  • 工員数と整備士の割合を毎月確認し、退職の予定がわかったら運輸支局と振興会に相談する。
  • 検査員の選任と変更を、変更の日から15日以内に届け出ている。
  • 検査員が毎年研修を受け、修了証を保管している。
  • 検査員が休みの日に適合証の証明がされていないかを、出勤簿と照らしている。
  • 検査用機械器具の始業点検と定期点検の記録が残り、校正の有効期間が切れていない。
  • 指定整備記録簿を交付番号順に綴じ、2年間保存している。
  • 検査作業と整備作業を分け、検査員が検査の全過程を自ら行っている。

指定を受ける前の段取りは認証工場から指定工場になるにはで、認証工場の段階の整備主任者の届出は整備主任者の選任届で確認できます。

まとめ

指定工場は、道路運送車両法第94条の3により設備、技術、管理組織を基準どおりに維持する義務を負い、守れていなければ改善報告、是正命令と段階を追って処分が重くなります。監査では、振興会連合会のマニュアルにある点検票のように、組織図、平面図、機器、適合証、記録簿、校正記録が現場と突き合わされます。工員の不足は3点、検査員がいない状態は20点で、20点は交付停止命令の基準に届く点数です。検査員の変更は15日以内に届け出ます。合計360点以上、ペーパー車検、5台以上の不正改造車への交付、命令違反などは指定取消しの対象で、2023年には完成検査の一部を省いた事業場の取消しが関東と東北で公表されました。人が欠けそうなときは早めに運輸支局と振興会に相談し、点検票の項目を日頃から自分たちで確かめておいてください。

指定工場の監査と行政処分に関するよくある質問

指定工場の工員が不足したらどうなりますか?
行政処分等の基準の別表2では「工員が不足している」は違反点数3点です。整備士の割合も崩れれば「整備士の保有数を確保していない」3点が加わります。改善報告を求められた後も改善されなければ是正命令の対象になり、是正命令に従わなければ指定の取消しの対象です。補充までの扱いは管轄の運輸支局に相談してください。
自動車検査員が辞めたら、指定工場はどうすればよいですか?
道路運送車両法第94条の4により、検査員は事業場ごとに選任が必要で、変更したら15日以内に地方運輸局長へ届け出ます。検査員がいない状態は20点、届出の未提出は9点です。選任されていない人に証明させて適合証を交付すると1台ごとに20点が付くので、後任が選任されるまでの車検の受け方は運輸支局に確認してください。
指定工場が取り消しになるのはどんな場合ですか?
合計点数が360点以上になった場合のほか、ペーパー車検、5台以上の不正改造車への適合証の交付、虚偽の指定申請や変更届出、指定の廃止の未届出、是正命令や交付停止命令や解任命令に従わない場合などです。悪質な行為は点数にかかわらず取り消されることがあります。
指定工場の監査ではどんな書類を見られますか?
振興会連合会のマニュアルにある点検票の例では、組織図、事業場の平面図、指定申請書の控え、管理規程、保安基準適合証の出納簿と交付台帳、出勤簿、指定整備記録簿、検査機器の点検記録表と校正結果成績表、検査員と整備主任者の研修の修了証などが確認の対象です。
監査に備えて、記録の管理にシステムを使うべきですか?
紙でも管理はできますが、記録簿と適合証、見積書、作業指示書の内容が食い違うと監査で指摘されやすくなります。自動車整備システム(自動車整備ソフト)で入庫から記録簿までを一続きで管理すると、転記の誤りを減らせます。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかだけでなく、整備システム リースなしで導入できるか、指定整備記録簿に対応しているかを確かめてください。中古車販売もするなら、車両販売システムや車販ソフトと顧客情報を共有できるかも比べる材料です。

出典

この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。

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