タイヤ屋の開業ガイド|タイヤショップに認証は要るか、必要な設備・保管サービスと整備工場への広げ方

タイヤ屋(タイヤショップ)は、タイヤとホイールの交換だけを仕事にするなら、自動車特定整備事業の認証(認証工場)がなくても開業できます。道路運送車両法施行規則第3条が定める分解整備の作業に、ホイールの脱着とタイヤの組み替えが含まれていないためです。ただし、ブレーキのキャリパやドラムを外す作業、足回りの部品を外す作業まで受けると分解整備になり、認証が必要になります。この記事では、タイヤ屋の開業で認証が要る作業と要らない作業の線引き、タイヤチェンジャー、ホイールバランサー、リフトなどの設備、人を雇うときの安全の決まり、タイヤ保管サービスの始め方と保管量の確認、そしてタイヤ屋から整備工場へ広げる手順を、法令の条文で確かめた内容で整理しました。設備の価格は機種と仕様で大きく変わるため、相場ではなく見積りの取り方を書いています。
この記事で確認した一次情報
- 道路運送車両法施行規則(e-Gov法令検索)第3条(分解整備の定義)、第57条(認証基準)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第36条第33号(タイヤの空気充てんの特別教育)、第328条の2(安全囲い等)
- 危険物の規制に関する政令(e-Gov法令検索)第1条の12と別表第四(指定可燃物の合成樹脂類)
- 消防法(e-Gov法令検索)第9条の4(指定可燃物の貯蔵は市町村条例)
タイヤ屋の開業に認証工場の認証は要るか
タイヤ屋の開業に認証が要るかどうかは、受ける作業が施行規則第3条の分解整備に当たるかで決まります。第3条は分解整備を、原動機、動力伝達装置、走行装置、かじ取り装置、制動装置、緩衝装置、連結装置の決められた部品を「取り外して行う」整備や改造として列挙しています。走行装置で挙がっているのはフロント・アクスル、前輪独立懸架装置(ストラットを除く)、リア・アクスル・シャフトで、ホイールやタイヤは入っていません。そのため、タイヤの組み替え、ホイールごとの履き替え、ローテーション、バランス取り、パンク修理は、認証のない店でも仕事として受けられます。一方、制動装置のブレーキ・ドラムやディスク・ブレーキのキャリパを取り外す作業は第5号に、ドライブ・シャフトを取り外す作業は第2号に当たります。タイヤ交換のついでにブレーキパッドの交換や足回りの修理を頼まれたとき、キャリパなどを外すなら認証工場でなければ受けられません。認証を受けずに分解整備を業として行うと、道路運送車両法第109条第11号により50万円以下の罰金の対象です。
| タイヤ屋で頼まれる作業 | 認証 | 根拠 |
|---|---|---|
| タイヤの組み替え、履き替え、ローテーション | 不要 | 第3条の列挙に含まれない |
| ホイールバランス調整、パンク修理、空気圧の点検 | 不要 | 第3条の列挙に含まれない |
| ブレーキ・キャリパ、ブレーキ・ドラムを外す作業 | 必要 | 第3条第5号 |
| フロント・アクスル、リア・アクスル・シャフトを外す作業 | 必要 | 第3条第3号 |
| ステアリングのリンク装置の連結部を外す作業 | 必要 | 第3条第4号 |
分解整備の範囲を装置ごとに細かく見たい場合は、分解整備の定義とはを参照してください。中古のタイヤやホイールを買い取って売る場合は、古物営業法第3条により都道府県公安委員会の許可が必要です。許可の取り方は古物商許可の取り方で説明しています。
タイヤショップ開業に必要な設備(タイヤチェンジャー・バランサー・リフト)
タイヤショップの開業で中心になる設備は、タイヤチェンジャー、ホイールバランサー、車を持ち上げる機器、エアコンプレッサー、インパクトレンチとトルクレンチの5つです。タイヤチェンジャーはホイールからタイヤを外して組み付ける機械で、扱うホイールの最大径と扁平タイヤやランフラットタイヤへの対応で機種が分かれます。ホイールバランサーは組み付けたタイヤとホイールの重さの偏りを測り、おもりを付ける位置を示します。車を持ち上げる機器は、ガレージジャッキで始める店もあれば、2柱リフトや門型リフトを置く店もあります。リフトは建物の床の強さと天井の高さで置けるかどうかが決まるため、物件を決める前に設置条件を販売店に確認してください。リフトの種類ごとの違いは整備工場のリフトの種類で比べています。インパクトレンチで仮締めしたナットは、最後にトルクレンチで車ごとの規定トルクに締めます。これらの機械は認証工場の基準ではなく店の判断でそろえるものですが、将来認証を取るなら、施行規則別表第五の作業機械(エアコンプレッサ、ジャッキなど)と重なるものを選んでおくと、買い足しが減ります。
| 設備 | 用途 | 見積りで確かめること |
|---|---|---|
| タイヤチェンジャー | タイヤの脱着と組み付け | 対応ホイール径、ランフラットや大径扁平タイヤへの対応、必要な空気圧と電源 |
| ホイールバランサー | 重さの偏りの測定 | 対応タイヤ幅と径、測定時間、設置スペース |
| リフトまたはジャッキ | 車の持ち上げ | 床の強さ、天井高さ、基礎工事の要否、対応車両重量 |
| エアコンプレッサー | 空気充てん、エア工具の動力 | タンク容量、電源(単相か三相か)、騒音 |
| インパクトレンチ、トルクレンチ | ナットの脱着と締め付け | 締付トルクの範囲、校正の方法 |
設備の費用は、新品か中古か、リースか購入かで大きく変わります。複数の販売店から同じ条件で見積りを取り、設置工事と電気工事が含まれているかを並べて比べてください。認証工場に必要な機械の一覧は認証工場に必要な設備・工具一覧にあります。
タイヤ交換の安全と法令(空気充てんの特別教育・ホイールナット)
タイヤ屋で人を雇う場合、タイヤへの空気の充てんは労働安全衛生法の特別教育が必要な業務です。労働安全衛生規則第36条第33号は、「自動車(二輪自動車を除く。)用タイヤの組立てに係る業務のうち、空気圧縮機を用いて当該タイヤに空気を充てんする業務」を特別教育の対象に挙げています。事業者は、この業務に就かせる従業員に、あらかじめ特別教育を行わなければなりません。また第328条の2は、空気圧縮機でタイヤに空気を充てんする作業では、タイヤの種類に応じて空気の圧力を適正に調節させ、破裂したタイヤなどの飛来を防ぐ安全囲い等の器具を使わせることを事業者に求めています。経営者が1人で作業する間は従業員がいないため特別教育の義務はかかりませんが、破裂の危険は同じなので、安全囲いは最初から用意しておくのが安心です。ホイールナットの締め付けも事故につながる作業です。国土交通省は大型車のタイヤ脱着時のホイール・ナットの点検と整備について注意喚起しており、令和8年度の整備主任者法令研修資料でも取り上げられています。締め付け後のトルク確認と、走行後の増し締めの案内を作業の手順に入れてください。
特別教育の科目と時間は「安全衛生特別教育規程」で定められています。外部の講習を受けさせる方法もあります。受講の記録は、受講者と科目を書いて3年間保存します(労働安全衛生規則第38条)。
タイヤ保管サービスの始め方と保管量の確認
タイヤ保管サービスは、履き替えたタイヤを店で預かり、次の履き替え時期に連絡する仕組みで、季節ごとに同じお客様が戻ってくる理由になります。始める前に確かめておきたいのは、保管する量と火災予防の決まりです。消防法第9条の4は、火災が広がりやすい物品を「指定可燃物」とし、その貯蔵と取扱いの基準を市町村条例で定めるとしています。危険物の規制に関する政令の別表第四では、合成樹脂類のうち発泡させたもの以外は3,000キログラム以上が指定可燃物で、合成樹脂類には不燃性又は難燃性でないゴム製品が含まれると備考で定義されています。仮に1本10キログラムのタイヤなら300本で3,000キログラムに届く計算です。ホイール付きで預かるならホイールの重さも加わります。保管量が増えそうなときは、所轄の消防署に届出の要否と置き方の基準を相談してください。預かり中の盗難や火災に備える保険、預かり証の書式、保管料の決め方も、受付を始める前に決めておきます。
- 保管の場所と最大本数を決め、重さの合計を出して消防署に相談する
- 預かり証に、預かった本数、ホイールの有無、傷の状態、保管期間、引き取りがない場合の扱いを書く
- 次の履き替え時期の連絡方法(電話、はがき、メッセージ)を決める
- 引き取った古タイヤの処理方法と料金の受け方を、都道府県の廃棄物担当窓口で確認する
タイヤ屋から整備工場へ広げる手順
タイヤ屋から整備工場へ広げるときは、認証の要らない作業を増やす段階と、認証を取って分解整備と車検を受ける段階に分けて考えます。最初の段階では、オイル交換、バッテリー交換、ワイパーやランプ類の交換、点検の相談など、タイヤ交換で来たお客様に続けて頼まれる作業を足します。ブレーキや足回りの修理を頼まれたときは、近くの認証工場に外注して受けます。次の段階で認証工場を取るには、施行規則第57条の基準を満たす必要があります。屋内作業場と車両置場の寸法(別表第四)、作業機械(別表第五)、そして特定整備に従事する従業員2人以上と、一級又は二級の整備士1人以上です。整備士1人だけの店では認証を受けられないため、2人目の確保が広げる時期を決めます。詳しくは認証工場は1人で開業できるかで説明しています。タイヤ交換用に借りた物件が認証の寸法を満たすかどうかは、物件を決める前に認証工場の条件一覧で照らしておくと、移転の手間を避けられます。
| 段階 | 受ける作業 | 必要なもの |
|---|---|---|
| タイヤ屋として開業 | 組み替え、履き替え、バランス、パンク修理、保管 | タイヤチェンジャー、バランサー、リフトかジャッキ |
| 作業を広げる | オイル、バッテリー、消耗品の交換、点検の相談 | 外注先の認証工場、見積りと記録の仕組み |
| 認証工場になる | 分解整備、車検整備 | 別表第四の作業場、別表第五の機械、従業員2人以上と二級以上の整備士 |
タイヤショップの集客と季節の波
タイヤショップの売上は、冬用タイヤへの履き替えと夏用タイヤへの戻しの時期に集まり、それ以外の月は少なくなりやすいという波があります。雪の降る地域ほど波が大きく、繁忙期には予約が集中して1日に受けられる台数が売上の上限になります。この波に備えるには、繁忙期の前に保管サービスのお客様へ予約の案内を出して作業日を分散させること、閑散期に受けられる作業(パンク修理、空気圧点検、オイル交換、整備の相談)を用意しておくことが役に立ちます。集客の方法は、地図検索への店舗登録、店頭の看板、保管サービスの利用者への連絡が基本です。整備工場の集客方法は整備工場の集客方法9選に、作業料金の決め方は整備工場の工賃の決め方とレバーレートにまとめています。工賃表を店頭に出しておくと、繁忙期の電話での説明が短くなります。
タイヤ屋の開業に関するよくある質問
- タイヤ交換だけなら認証工場でなくても開業できますか?
- できます。施行規則第3条の分解整備にホイールの脱着とタイヤの組み替えは含まれていないため、認証のない店でもタイヤ交換を仕事として受けられます。ブレーキ・キャリパやブレーキ・ドラムを外す作業は第5号の分解整備なので、認証が必要です。
- タイヤショップの開業に資格は必要ですか?
- タイヤ交換だけなら整備士の資格がなくても開業できます。ただし従業員にタイヤの空気充てんをさせるなら、労働安全衛生規則第36条第33号の特別教育が必要です。将来認証工場になるには、一級又は二級の整備士が1人以上要ります。
- タイヤを何本まで保管できますか?
- 本数の上限は法令にはありませんが、ゴム製品を含む合成樹脂類は3,000キログラム以上で指定可燃物になり、市町村条例の貯蔵基準がかかります。保管する本数と重さの合計を出して、所轄の消防署に相談してください。
- 中古タイヤの販売もできますか?
- 中古のタイヤやホイールを買い取って販売するなら、古物営業法第3条の許可が必要です。新品の販売とお客様のタイヤの交換作業だけなら古物商許可はかかりません。
- タイヤ屋の顧客管理はどう始めればよいですか?
- 保管しているタイヤの本数と状態、次の履き替え時期、車ごとのタイヤサイズを記録し、連絡に使える形で残すことから始めます。整備まで広げる予定なら、車両と作業の履歴をまとめて管理できる自動車整備システムを選ぶと、認証を取ったあとも同じ記録を使えます。整備ソフト おすすめの情報を見るときは、タイヤの保管管理を記録できるかも確かめてください。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月24日確認)。
- e-Gov法令検索 道路運送車両法施行規則(第3条、第57条、別表第四、別表第五):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
- e-Gov法令検索 道路運送車両法(第109条):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- e-Gov法令検索 労働安全衛生規則(第36条、第38条、第328条の2):https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- e-Gov法令検索 消防法(第9条の4):https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
- e-Gov法令検索 危険物の規制に関する政令(第1条の12、別表第四):https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306
- e-Gov法令検索 古物営業法(第3条):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000108
- 近畿運輸局 令和8年度 整備主任者法令研修資料「整備業務関係について」:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000380598.pdf