自動車整備振興会とは|入会のメリットと会費、独立した整備工場が使える支援

独立して整備工場を開いた人、これから開こうと考えている整備士の多くが一度は耳にするのが「振興会に入るかどうか」という話です。この記事では、自動車整備振興会とは何かを道路運送車両法の条文から確認し、入会が義務かどうか、独立開業した工場が入会で受けられる支援と会費の例、入会の流れを整理します。会費の金額は、各県の振興会が公式に記載しているものだけを例として示します。独立したばかりの工場にとって、振興会は認証の準備や毎年の研修、整備情報の入手で頼れる窓口になり得ます。費用と受けられる支援を並べて見れば、自分の工場で入会するかどうかを落ち着いて判断できます。
この記事で確認した一次情報
- 道路運送車両法 第95条・第96条(e-Gov法令検索)自動車整備振興会の目的と事業
- 日整連とは(日本自動車整備振興会連合会)全国の振興会と会員事業場の数
- 自動車整備振興会加入等に関するQ&A(東京都自動車整備振興会 平成30年9月)会員サービス、入会金、会費
自動車整備振興会とは(法律上の位置づけ)
自動車整備振興会とは、道路運送車両法第95条に基づいて、自動車の整備に関する設備の改善と技術の向上、整備事業の業務の適正な運営を目的に活動する一般社団法人又は一般財団法人です。同条は、振興会が行う事業として、意見の公表や行政庁への申出、調査研究と統計、講演や講習、自動車の使用者等の苦情処理と相談、整備事業者への相談と指導、広報の6つを挙げています。同法第96条は、これ以外の者が名称に「自動車整備振興会」の文字を使うことを禁じています。全国組織は一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)で、日整連によると、自動車整備事業を営む約9万事業場を主な会員として都道府県ごと(北海道は7地区)に組織された振興会53団体が正会員になっています。独立して工場を開く整備士にとっては、地元の振興会が、認証や研修、整備情報について相談できる身近な業界団体という位置づけです。
| 第95条が定める振興会の事業 | 独立した工場との関わりの例 |
|---|---|
| 意見の公表、行政庁への申出 | 法令や税制に関する業界の意見の取りまとめ |
| 調査研究、統計、資料の収集と提供 | 整備事業の実態調査や白書の発刊、整備情報の提供 |
| 講演、講習 | 整備士の養成講習、新技術の研修 |
| 使用者等の苦情処理と相談 | ユーザーからの整備相談の受付 |
| 整備事業者への相談と指導 | 認証や指定の取得、事業運営の相談 |
| 広報 | 点検整備の重要性をユーザーに伝える広報 |
整備振興会への入会は義務か
整備振興会への入会は、認証を受けるための法律上の条件にはなっていません。道路運送車両法第80条は、認証の基準として、事業場の設備と従業員が国土交通省令の基準に適合すること、申請者が一定の欠格事由に当たらないことを定め、施行規則第57条はその中身として、作業場と車両置場、作業機械、2人以上の従業員、整備士の資格などを挙げています。これらに振興会への入会は含まれていません。一方で、入会の資格は振興会ごとの定款で決まっています。熊本県自動車整備振興会は、正会員を「この法人の地区内に所又は事業場を有し、自動車の整備に関係のある事業を営む者」などと定義しており、沖縄県自動車整備振興会は、事業に賛同できる個人又は法人であれば誰でも入会できると案内しています。東京都自動車整備振興会は、1事業場を1会員として扱っています。独立した工場が入会するかどうかは、受けられる支援と会費を比べて決める事業判断です。
東京都自動車整備振興会のQ&Aは、会員の認証事業場が持込み検査を予約するとき、振興会のホームページからリンクした「車検予約システム」を使い、車検1台200円の能率割会費を納めるよう求めています。国の検査場には国の予約システムもあります。入会後の予約方法は、所属する振興会の案内に従ってください。
整備振興会に入会するメリット(独立した工場が使える支援)
整備振興会に入会するメリットは、認証や指定の手続き、整備士の講習、整備情報の入手といった、独立した工場が1社だけで抱えると手間のかかる部分を相談できることです。東京都自動車整備振興会の加入等Q&A(平成30年9月)は、会員向けサービスとして、認証工場と指定工場の取得相談、整備主任者研修等の案内と受付、継続検査OSSの申請受付、自動車整備士養成講習、スキャンツール研修やスキャンツール等の助成金の交付申請、技術相談窓口と技術資料室、FAINESによる整備技術の情報提供、分解整備記録簿や定期点検記録簿の頒布、求人掲示板などを挙げています。沖縄県自動車整備振興会も、認証工場と指定工場の申請に関する相談、車検予約システムの使用、整備技術相談窓口、FAINESの利用、3級と2級の講習会の会員価格を挙げています。独立直後は1人で何役もこなすことになるため、こうした窓口があるかどうかで、手続きにかかる時間は大きく変わります。
| 支援の分野 | 振興会の公式資料に記載のある内容 | 記載元 |
|---|---|---|
| 認証と指定 | 認証工場、指定工場の取得相談、管理運営の相談、作業場の変更や整備主任者選任手続きの支援 | 東京都、沖縄県 |
| 研修と講習 | 整備主任者研修等の案内と受付、整備士養成講習、スキャンツール研修 | 東京都、沖縄県 |
| 整備情報 | FAINES、技術相談窓口、技術資料室、日整連発行の技術情報の配布 | 東京都、沖縄県 |
| 窓口業務 | 継続検査OSSの申請受付、車検予約、記録簿やステッカーの頒布、自賠責保険の取扱い | 東京都 |
| 人材と広報 | 求人掲示板、会員ホームページの作成、ユーザー向け広報 | 東京都 |
FAINESは日整連が提供するインターネットの整備情報提供システムで、メーカー発行のサービスマニュアル、故障整備事例、回路図、点検基準値、標準作業点数、リコール情報などを閲覧できます。日整連のOBD検査のページは、各運輸局や運輸支局での取扱いについては所属の自動車整備振興会に問い合わせるよう案内しています。OBD検査のような新しい制度に一人で対応するより、地域の取扱いを知っている窓口に聞けることは、独立した工場にとって現実的な助けになります。
整備振興会の入会金と会費(公式記載のある例)
整備振興会の入会金と会費は都道府県ごとに決められており、全国一律の金額はありません。公式資料で金額を確認できた例として、東京都自動車整備振興会の加入等Q&A(平成30年9月)では、入会金2万円、基本会費月額1,400円に加え、能率割会費として車検(継続検査、構造変更検査、中古新規検査)1台につき200円、定期点検1台につき25円が定められています。東京では支部への加入も定款で規定されており、支部の入会金は3万円(二輪自動車支部は2万円)、支部会費は月額5,000円以内です。沖縄県自動車整備振興会の入会案内(2015年11月25日掲載)では、入会金100,000円(入会時、本部のみ)、普通月会費は支部により異なり、車検1台ごとの能率会費がかかると案内されています。熊本県の振興会のページには金額の記載がありません。いずれも掲載時点の情報なので、入会前に最新の金額を確認してください。
| 振興会(資料の時点) | 入会金 | 会費 |
|---|---|---|
| 東京都(平成30年9月のQ&A) | 2万円。支部入会金は3万円(二輪自動車支部は2万円) | 基本会費月額1,400円、車検1台200円、定期点検1台25円。支部会費は月額5,000円以内 |
| 沖縄県(2015年11月25日掲載) | 100,000円(入会時、本部のみ) | 普通月会費は支部により異なる。車検1台ごとの能率会費あり |
| 熊本県(入会及び退会の方法) | 入会申込と同時に納付(金額の記載なし) | 年会費を入会申込と同時に納付(金額の記載なし) |
東京都の金額で試算すると、月に車検30台と定期点検20台を扱う工場の本部会費は、基本会費1,400円+車検200円×30台+定期点検25円×20台で月7,900円になります。これに支部会費(月額5,000円以内)が加わります。自分の工場の見込み台数で同じ計算をしておくと、年間の固定費として資金計画に組み込めます。開業資金の全体像は整備工場の開業資金と補助金で扱っています。
整備振興会への入会の流れと時期
整備振興会への入会は、所属する地域の振興会に入会申込書を出し、入会金を納める流れが基本です。沖縄県自動車整備振興会は、本部と支部の入会申込書に記入押印し、入会金を添えて指導課に申し込むよう案内しています。熊本県自動車整備振興会は、入会申込書の提出と同時に入会金と年会費を納め、会員名簿に登録された時点で会員資格を得るとしています。入会の時期について、東京都自動車整備振興会のQ&Aは、認証の申請書類は運輸支局に提出し、最終判断は運輸局が行うとしたうえで、書類提出に至るまでの準備段階で、必要な書類、機器や作業場の基準への適否、事業運営のための経営相談などを支援すると説明しています。独立を考え始めた段階で地域の振興会に一度相談しておくと、物件選びや工具の準備で基準に合わないものを選ぶリスクを減らせます。
- 日整連の「自動車整備振興会の紹介」で、地域の振興会の所在地と連絡先を調べる。
- 認証取得の準備段階で相談し、作業場や工具が基準に合うかを確認する。
- 入会金、本部と支部の会費、能率割会費の金額を確認する。
- 入会申込書を提出し、入会金(振興会によっては年会費も)を納める。
- 整備主任者研修、OSS、車検予約など、入会後に使う窓口の手続きを確認する。
関東ブロックの例では、日整連の振興会紹介ページに、東京都、神奈川県、埼玉県、群馬県、千葉県、茨城県、栃木県、山梨県の振興会の住所、電話番号、URLが掲載されています。認証取得の全体の流れは認証工場の取得方法と流れ、作業場や工具の基準は認証工場の設備・工具一覧で確認できます。
入会前に確認しておきたいこと
入会前に確認しておきたいのは、会費の総額、自分の工場で実際に使うサービス、退会時の扱いの3つです。会費は本部と支部の両方にかかる場合があり、車検や定期点検の台数に応じた能率割会費も加わるため、見込み台数で年額を出しておきます。サービスについては、整備主任者研修の受付、継続検査OSS、FAINES、技術相談、講習の会員価格など、自分の工場の業務で使う場面を具体的に挙げてみると、会費との釣り合いを判断しやすくなります。退会については、熊本県自動車整備振興会のように、退会届を事務局へ持参する必要があり、郵送やメールでは受け付けず、納付済みの年会費は返金されないと定めている例があります。将来指定工場を目指すかどうかも判断材料になり、東京都の振興会は指定工場の管理運営に関する相談と指導(巡回相談)や、指定整備事業者研修を会員サービスに挙げています。
整備主任者として毎年度受ける研修については整備主任者になるには、指定工場との違いは認証工場と指定工場の違いで詳しく扱っています。
まとめ
自動車整備振興会とは、道路運送車両法第95条に基づき、整備の技術向上と整備事業の適正な運営のために講習、相談、情報提供などを行う団体で、全国53の振興会が日整連の正会員になっています。認証の法律上の条件に入会は含まれておらず、入るかどうかは独立した工場が自分で選べます。入会すると、認証や指定の取得相談、整備主任者研修の受付、継続検査OSS、FAINESによる整備情報、講習の会員価格などを使えると、東京都や沖縄県の振興会が案内しています。会費は県ごとに異なり、東京都の例では入会金2万円、基本会費月額1,400円に車検1台200円などの能率割会費が加わります。独立を考え始めたら、まず地域の振興会の連絡先を調べ、認証の準備段階で一度相談してみてください。費用と受けられる支援を自分の工場の台数で比べれば、入会するかどうかは数字で判断できます。
自動車整備振興会に関するよくある質問
- 自動車整備振興会に入会しないと認証工場になれませんか?
- 道路運送車両法第80条と施行規則第57条が定める認証基準は、事業場の設備と従業員、申請者の欠格事由に関するもので、振興会への入会は基準に含まれていません。ただし東京都自動車整備振興会は、運輸支局への書類提出までの準備段階で、書類や機器、作業場の基準への適否などを支援すると説明しています。
- 自動車整備振興会の入会金と会費はいくらですか?
- 都道府県ごとに異なります。東京都自動車整備振興会の加入等Q&A(平成30年9月)では、入会金2万円、基本会費月額1,400円、能率割会費は車検1台200円、定期点検1台25円で、支部の入会金3万円と支部会費月額5,000円以内が別にかかります。沖縄県自動車整備振興会の案内(2015年掲載)では入会金100,000円です。最新の金額は各振興会に確認してください。
- 入会は会社単位ですか、工場単位ですか?
- 東京都自動車整備振興会は、企業単位ではなく1事業場を1会員としており、認証制度の考え方に基づいて事業場単位で入会と管理を行うと説明しています。複数の工場を持つ場合は、工場ごとの入会になるかを所属予定の振興会に確認してください。
- 振興会に入ると、どんな整備情報が使えますか?
- 日整連が提供するFAINESは、メーカーのサービスマニュアル、故障整備事例、回路図、点検基準値、標準作業点数、リコール情報などを閲覧できる整備情報提供システムです。沖縄県自動車整備振興会は、会員が利用できるサービスとしてFAINESを挙げています。
- 振興会を退会するときの注意点はありますか?
- 熊本県自動車整備振興会は、退会届を事務局へ持参するよう案内しており、郵送やメールでは受け付けていません。当該年度の年会費等を納付済みの場合は返金されないとしています(定款第8条第2項)。手続きは振興会ごとに異なるため、事前に確認してください。
- 独立した整備工場で、顧客・車両・整備記録の管理はどうすればよいですか?
- 販売する車の仕入れ値・整備費・売値、顧客の情報、注文書や保証書を1か所で扱えるのが車両販売システム(車販ソフト)です。整備も行う場合は自動車整備システム(自動車整備ソフト)とデータがつながるかを確認します。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、開業時の台数に合うかも確かめてください。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月4日確認)。
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 道路運送車両法施行規則(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
- 日本自動車整備振興会連合会 日整連とは:https://www.jaspa.or.jp/association/about/
- 日本自動車整備振興会連合会 日整連の事業内容:https://www.jaspa.or.jp/association/about/business.html
- 日本自動車整備振興会連合会 自動車整備振興会の紹介(関東ブロック):https://www.jaspa.or.jp/association/districts/kanto.html
- 日本自動車整備振興会連合会 FAINES(ファイネス)とは:https://www.jaspa.or.jp/member/faines/guide01.html
- 日本自動車整備振興会連合会 OBD検査(車載式故障診断装置を活用した検査):https://www.jaspa.or.jp/member/obd/
- 東京都自動車整備振興会 自動車整備振興会加入等に関するQ&A(平成30年9月):https://www.tossnet.or.jp/LinkClick.aspx?fileticket=6LybZloKUEk%3D&tabid=62
- 東京都自動車整備振興会 東整振について:https://www.tossnet.or.jp/tabid250.html
- 沖縄県自動車整備振興会 入会のご案内(2015年11月25日掲載):https://www.jaspa-okinawa.or.jp/oshirase/6254/
- 熊本県自動車整備振興会 入会及び退会の方法:http://www.k-aspa.com/sinkoukai/nyukai.htm