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受託者賠償責任保険とは|整備工場が入る保険の種類とお客様の車を預かる間の事故

公開日:2026年10月24日

受託者賠償責任保険と整備工場の保険 お客様の車を預かる間の事故の考え方

受託者賠償責任保険とは、お客様から預かった物を壊したり、なくしたり、盗まれたりして、持ち主に損害賠償をする責任を負ったときに備える保険です。整備工場では、入庫したお客様の車がその「預かった物」にあたります。独立して工場を始めると、作業中の事故、預かっている間の盗難や火災、納車した後の不具合、従業員のけがなど、勤めていた頃は会社が引き受けていたリスクを自分で背負うことになります。この記事では、日本損害保険協会の解説と民法、労災保険の制度を確かめながら、整備工場が検討する保険の種類と、それぞれがどの場面に対応するのかを整理します。特定の保険会社や商品、保険料には触れていません。補償の範囲は商品と約款ごとに違うため、加入前に保険会社か代理店で必ず確かめてください。

この記事で確認した一次情報

受託者賠償責任保険とは

受託者賠償責任保険とは、事業者が他人から預かって管理している物(受託物)に損害を与え、持ち主に対して法律上の損害賠償責任を負ったときの損害を補償する賠償責任保険の一つです。単独の保険の形をとるか、ほかの賠償責任保険に付ける特約の形をとるかは、保険会社ごとに違います。整備工場がお客様の車を預かるとき、民法の考え方では、預かった車を返すまで善良な管理者の注意をもって保存する義務を負います(民法第400条)。修理や車検の依頼は、仕事の完成を約束して報酬を受け取る請負(同第632条)にあたることが多く、作業中や保管中に工場の過失で車を傷つければ、その賠償は工場が負うのが原則です。入庫中の車がリフトから落ちた、移動させるときに壁にぶつけた、夜間に工場から盗まれた、隣の建物の火事が燃え移った、といった場面で、工場に過失や責任があるかどうか、保険の対象になるかどうかは、事故の状況と契約の中身で決まります。受託者賠償責任保険は、そのうち「預かった物の損害」の部分を受け持つ保険です。

「受託物」に入庫中の自動車が含まれるか、構内を移動させる運転中の事故まで含むか、盗難や火災が対象かは、商品ごとに違います。整備工場向けとして案内されている商品でも、約款の「保険金を支払わない場合」を必ず読んでください。

整備工場が入る保険の種類

整備工場が検討する保険は、誰の、何に対する損害かで6つほどに分けると整理しやすくなります。日本損害保険協会の解説では、施設賠償責任保険は所有、使用、管理している施設の欠陥や、従業員等の仕事の遂行により企業が法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償するもので、生産物賠償責任保険(PL保険)は製造、販売した製品の欠陥または行った工事・サービスの結果を原因とした損害賠償責任を補償するものとされています。整備工場に当てはめると、施設賠償は作業中に来店客がけがをした、工場の看板が落ちて通行人に当たった、といった場面、生産物賠償は納車した後に整備の不具合が原因で事故が起き、第三者に損害を与えた、といった場面にあたります。お客様の車そのものの損害は受託者賠償の受け持ちです。このほか、建物や設備を守る火災保険、従業員のけがに備える労災保険とその上乗せ、業務で使う車の自動車保険があります。

保険 備える場面(整備工場の例) 確かめたいこと
受託者賠償責任保険 預かった車を作業中や保管中に壊した、盗まれた 入庫車が受託物に含まれるか、構内移動中、盗難、火災
生産物賠償責任保険(PL保険) 整備の不具合が原因で納車後に事故が起き、他人に損害を与えた 作業の結果に起因する事故が対象か、車そのものの修理費の扱い
施設賠償責任保険 来店客が作業場で転んだ、設備が落ちて通行人にけがをさせた 預かった物の損害が除かれていないか
火災保険 工場の建物、リフトや工具などの設備の火災や風災 設備と在庫部品まで入っているか
労災保険・上乗せの保険 従業員の作業中のけが 経営者自身が対象になるか(特別加入)
自動車保険 自社の積載車や代車での事故 代車として貸し出すときの補償

お客様の車を預かっている間の事故の考え方

お客様の車を預かっている間の事故は、「工場の中か外か」と「誰が運転していたか」で、使う保険が変わります。工場の中で作業中や保管中に起きた損害は、受託者賠償責任保険の受け持ちになることが多い場面です。注意したいのは、引き取りや納車、試運転などで、工場の人がお客様の車を道路で運転している間の事故です。日本損害保険協会の「損害保険Q&A くるまの保険」では、自動車保険の搭乗者傷害保険について、業務として被保険自動車を受託している場合には補償の対象外と説明しています。お客様が入っている自動車保険の補償が、工場が業務で預かっている間にどこまで使えるかは約款で決まり、搭乗者傷害保険のように対象外と書かれているものもあります。お客様の保険をあてにするのは危うく、工場側で備えを考えておく必要があります。預かった車の運転中の事故まで補償する商品があるかどうかを、保険会社や代理店に具体的な場面を挙げて聞いてください。

預かるときの説明も大切です。入庫時に車の傷やへこみを写真で残し、お客様と一緒に確かめておけば、返すときに「この傷は前からあったか」で揉めることを防げます。貴重品は車内に残さないようにお願いし、鍵の保管場所と管理の方法を決めておきます。

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整備工場の労災保険と経営者の特別加入

整備工場で従業員を1人でも雇えば、その従業員は労災保険の対象になり、事業主は労働保険の加入手続きが必要です。一方で、経営者自身は労働者ではないため、そのままでは労災保険の対象になりません。厚生労働省の特別加入制度では、労働者を常時使用する中小事業主等が、労働保険事務組合に事務を委託するなどの要件を満たせば、経営者や家族従事者も特別に加入できます。京都労働局の案内では、サービス業や小売業などの業種区分ごとに労働者数の上限が示され、通年雇用でなくても1年間に100日以上労働者を使用していれば、常時使用として扱われると説明されています。従業員を雇わずに1人で工場を営む場合は、一人親方等の区分で特別加入できる業種かどうかが問題になりますが、同じ案内の一人親方等の業種一覧に自動車整備業の名前は見当たりません。1人工場の経営者が入れる区分があるかは、所在地の労働局か労働基準監督署に確かめてください。労災保険の給付で足りない部分は、民間の労働災害総合保険など上乗せの保険で備える方法があり、日本損害保険協会の解説でも労災保険の上乗せとして紹介されています。

EV・ハイブリッド車の整備では感電の危険もあり、法令で特別教育が決まっています。作業の安全の備えは電気自動車・ハイブリッド車の整備に必要な特別教育と絶縁用保護具の定期自主検査にまとめています。

整備工場の保険を選ぶ前に整理すること

整備工場の保険を選ぶ前には、自分の工場で起こり得る事故を場面ごとに書き出し、どの保険で受けるかを表にしておくと、重複や抜けが見えます。書き出すときは、入庫から納車までの流れに沿って、引き取り、構内の移動、リフトでの作業、夜間の保管、試運転、納車、納車後の不具合の順に考えます。そのうえで、預かる車の台数と1台あたりの価格の上限、夜間に車を屋外に置くか屋内に入れるか、代車を貸し出すか、出張して作業するかを保険会社や代理店に伝えると、見積と補償の範囲を具体的に出してもらえます。保険料は補償の範囲と支払限度額、免責金額で変わるため、複数の条件で見積を取って比べます。開業資金の中で保険料をどう見込むかは整備工場の開業資金と補助金、出張して作業するときの備えは出張整備で独立するにはで扱っています。

  • 入庫車の台数と、預かる車の価格の上限を把握している。
  • 夜間に車を屋外に置くか、屋内に入れるかを決めている。
  • 引き取りや納車、試運転でお客様の車を道路で運転するかを整理している。
  • 入庫時に車の傷を写真で記録し、お客様と確かめている。
  • 従業員を雇う場合の労働保険の手続きと、経営者自身の特別加入の可否を確かめている。
  • 代車を貸し出す場合の補償を確かめている。

日本カーネットでは、保険についてはご紹介までの対応です。保険の引き受けは各保険会社の審査によります。

受託者賠償責任保険と整備工場の保険に関するよくある質問

受託者賠償責任保険と施設賠償責任保険はどう違いますか?
施設賠償責任保険は、施設の欠陥や仕事の遂行が原因で第三者に損害を与えたときの賠償に備える保険です。受託者賠償責任保険は、預かった物そのものに損害を与えたときの賠償に備える保険です。整備工場では、入庫中のお客様の車の損害が受託者賠償の受け持ちになります。
整備の不具合で納車後に事故が起きたら、どの保険が対象ですか?
日本損害保険協会の解説では、行った工事・サービスの結果を原因とした損害賠償責任は生産物賠償責任保険(PL保険)の対象とされています。整備した車そのものの修理費が対象になるかは商品で違うため、約款で確かめてください。
預かった車を工場の人が運転中に事故を起こしたら、お客様の自動車保険は使えますか?
日本損害保険協会の「損害保険Q&A くるまの保険」では、搭乗者傷害保険について、業務として被保険自動車を受託している場合は補償の対象外と説明しています。お客様の保険がどこまで使えるかは約款で決まるので、お客様の保険に頼る前提にせず、工場側で備える保険があるかを確かめてください。
1人で整備工場を始める場合、労災保険には入れますか?
労働者を雇っていない経営者は、そのままでは労災保険の対象になりません。特別加入の区分に当てはまるかは業種と働き方で決まり、一人親方等の業種一覧に自動車整備業は見当たらないため、所在地の労働局か労働基準監督署に確認してください。
事故が起きたときに、入庫の記録はどう残せばよいですか?
入庫日時、車両の状態、作業の内容と担当者、納車日を1台ずつ記録しておくと、保険会社への説明やお客様との話し合いがしやすくなります。顧客と車両、作業の記録をまとめて残せる自動車整備システム(自動車整備ソフト)や、販売もする場合は車両販売システムで、記録の形を最初から決めておくと抜けが減ります。

出典

この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月24日確認)。

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