整備工場の利益率と粗利の考え方|売上の内訳と統計、利益を削る要因と毎月見る数字

独立して整備工場を始めると、売上は通帳で分かっても、どの仕事でどれだけ利益が残ったのかは見えにくくなります。車検で入るお金の中には国へ納める法定費用が混ざり、部品代も工賃も同じ請求書に並ぶからです。この記事では、整備工場の利益率と粗利の考え方を、売上の内訳ごとに整理します。日整連の自動車特定整備業実態調査(令和7年度)と国土交通省の指針で確認できた数字を年度つきで示し、利益率を下げる要因と、小さな工場の経営者が毎月見ておきたい数字をまとめました。業界全体の平均利益率のような数字は、公開資料では確認できなかったため載せていません。その代わりに、自分の工場の数字を自分で出す手順を書いています。
この記事で確認した一次情報
- 令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要(日本自動車整備振興会連合会)総整備売上高、1人あたり整備売上高、平均年収
- 自動車整備業分野に係る経営力向上に関する指針(国土交通省)人件費対総売上高比率、労働生産性の定義
- 点検整備料金のご説明(日本自動車整備振興会連合会)基本点検技術料、整備技術料、部品・油脂代、検査代行手数料、諸費用
整備工場の利益率を考える前に分ける売上の内訳
整備工場の売上は、利益の残り方がまったく違う4種類のお金に分けて考えます。日整連がユーザー向けに示している車検・定期点検時の料金項目は、基本点検技術料、整備技術料、部品・油脂代、保安確認検査料、検査代行手数料、故障診断料、諸費用です。このうち基本点検技術料と整備技術料、保安確認検査料、故障診断料は整備士の作業時間に対して受け取る技術料(工賃)で、仕入れ原価がほとんどかかりません。部品・油脂代は仕入れ値との差額だけが手元に残ります。検査代行手数料は運輸支局への手続きを代わりに行う料金です。諸費用は自動車重量税、自賠責保険料、検査手数料で、日整連の説明でも国や保険会社へ納める費用とされており、工場の利益にはなりません。売上の総額だけで利益率を見ると、法定費用の多い車検月ほど率が低く見えるので、まず内訳を分けて記録します。
| 売上の種類 | 日整連の料金項目 | 利益の残り方 |
|---|---|---|
| 技術料(工賃) | 基本点検技術料、整備技術料、保安確認検査料、故障診断料 | 原価は人件費と設備。仕入れ原価はほぼない |
| 部品・油脂 | 部品、油脂代 | 売値と仕入れ値の差額が粗利 |
| 手続きの料金 | 検査代行手数料 | 移動と手続きの時間が原価 |
| 預かるお金 | 諸費用(自動車重量税、自賠責保険料、検査手数料) | 工場には残らない |
法定費用を売上に含めて記帳するか、預り金や立替金として処理するかで、決算書の上の利益率は変わります。どちらで処理するかは顧問の税理士と決めておき、毎月の管理表では法定費用を除いた「工場の売上」で率を見ると比べやすくなります。
自動車整備業の売上高と1人あたり整備売上高の統計
日本自動車整備振興会連合会(日整連)の令和7年度自動車特定整備業実態調査によると、総整備売上高は6兆6,592億円で、前年度から4,031億円(6.4%)増えました。4年連続の増加です。このうち専業は2兆5,488億円で13.4%増、ディーラーは3兆493億円で2.5%増でした。調査時点は令和7年6月30日で、売上高は令和6年7月から令和7年6月までに決算を迎えた事業実績です。経営の目安として使いやすいのは、整備要員1人あたりの年間整備売上高です。自家を除く平均は1,659万5千円で、専・兼業は1,253万7千円、ディーラーは2,564万1千円でした。同じ調査で、技術料(工賃)の対前年増減率は5.8%と示されています。日整連の区分では、自動車整備業の売上高が総売上高の50%を超える事業場が専業です。整備が売上の中心の工場なら、自分の工場の1人あたり売上を専業の1,256万8千円と並べてみると、立ち位置がつかめます。
| 項目(令和7年度調査) | 数値 |
|---|---|
| 総整備売上高 | 6兆6,592億円(前年度比6.4%増) |
| うち専業 | 2兆5,488億円(同13.4%増) |
| 事業場(認証工場)数 | 92,251事業場(うち指定工場29,810) |
| 1事業場あたり整備要員数 | 4.36人 |
| 整備要員1人あたり年間整備売上高(専業) | 1,256万8千円 |
| 整備要員平均年収(専業) | 395万7千円 |
| 技術料(工賃)の対前年増減率 | 5.8% |
売上の伸びには、作業の量が増えた分と、工賃や部品の単価が上がった分の両方が含まれています。概要資料からはその割合までは読み取れないため、自分の工場でも「台数」と「1台あたり単価」を分けて記録しておくと、伸びた理由を説明できます。
業態別の財務諸表(売上総利益や営業利益の構成)は、日整連が発行する「自整業の経営・給与データブック」に整備要員10人以下の事業場の集計として載っていますが、有料の刊行物のため、この記事では数字を引用していません。業界平均の利益率と比べたい場合は、加入している振興会に相談するか、刊行物を購入して確認してください。
整備工場の粗利と人件費の比率
整備工場の粗利とは、売上から部品の仕入れ値と外注費を引いた残りのことです。技術料には仕入れ原価がほとんどないため、整備工場の粗利の大部分は工賃から生まれます。その一方で、国土交通省の「自動車整備業分野に係る経営力向上に関する指針」は、整備作業は人手を要する工程が多く、資格を持つ従業員を一定数置くことが事業場の基準になっていることから、人件費対総売上高比率が25.3%と他業種より労働集約性が高いと書いています。つまり整備工場では、粗利から人件費を払った残りが営業利益になり、人件費が最大の費用です。小さな工場では経営者自身が整備士として作業していることが多く、経営者の取り分を人件費に入れずに計算すると、利益が実態より大きく見えます。自分の時間にも給与を置いて計算してください。
| 段階 | 計算 | 整備工場で見るところ |
|---|---|---|
| 工場の売上 | 請求額から法定費用を除いたもの | 技術料、部品、代行手数料に分けて記録 |
| 粗利 | 工場の売上-部品の仕入れ値-外注費 | 外注に出した作業の利幅 |
| 営業利益 | 粗利-人件費-家賃-設備の費用-その他の経費 | 経営者自身の給与を人件費に入れる |
計算の例を示します。数字はすべて説明用の仮の値です。ある月の工場の売上が100、部品の仕入れ値が30、外注費が10なら、粗利は60です。ここから人件費を含む固定費が55かかれば、営業利益は5になります。部品を同じ値段で売っても仕入れ値が5上がれば利益は0になり、工賃の売上が5増えれば利益は倍の10になります。
整備工場の利益率を下げる要因
整備工場の利益率を下げる要因は、売上として請求できない作業時間が増えることと、部品で利幅を失うことの2つに集約されます。代表的なのは、作業のやり直し(いわゆるコメバック)です。同じ車をもう一度リフトに上げても、原因が自社の作業なら追加の請求はできません。次に、部品の到着待ちや段取りの悪さで整備士が手を止めている時間です。工場を開けている時間は家賃も人件費もかかりますが、作業をしていない時間は売上を生みません。3つ目は値引きで、工賃を1割引くと、仕入れ原価のない工賃ではその分がそのまま利益から消えます。4つ目は部品在庫で、使わないまま古くなった部品は売れずに残ります。最後に、行った作業を請求書に載せ忘れる請求漏れです。国土交通省の指針も、仕入れ費、外注費、物流費、人件費などの費用を把握してコストを見える化することを取組の一つに挙げています。
- 作業のやり直しは、件数と原因を記録し、同じ原因が続く作業から手順を見直す。
- 部品の待ち時間は、受付の段階で部品を手配し、入庫日に揃っている状態をつくる。
- 値引きは、理由と金額を記録し、誰がいくら引いたかを月末に確かめる。
- 在庫は、半年以上動かない部品を一覧にし、発注の量を減らす。
- 請求漏れは、作業指示書と請求書を突き合わせ、追加作業を必ず書き足す。
国土交通省の指針は、取組に当たってコスト削減のみを目的とした人員削減を行わないこと、整備作業等の質を低下させないことにも留意するよう書いています。利益率を上げるために点検の手を抜けば、やり直しと信用の低下で、結局は利益を失います。
整備工場の経営で毎月見る数字
整備工場の経営で毎月見る数字は、入庫台数、1台あたりの工場の売上、売上の内訳、整備要員1人あたりの売上、の4つから始めると続けやすくなります。入庫台数は、車検、点検、一般整備、事故整備に分けて数えます。日整連の調査でも整備売上高は車検整備、定期点検整備、事故整備、その他整備に分けて集計されており、この区分で記録すれば白書や振興会の資料と比べられます。1台あたりの売上は、法定費用を除いた金額で出します。売上の内訳は、技術料と部品と代行手数料の割合です。技術料の割合が下がっている月は、部品の交換が多かったか、工賃を取れていない作業が増えた可能性があります。整備要員1人あたりの売上は、令和7年度調査の専業平均1,256万8千円(年額)を12で割った約105万円を月の目安として比べられます。国土交通省の指針は、労働生産性を営業利益、人件費、減価償却費の合計を労働者数(又は労働者数に1人当たり年間就業時間を掛けた数値)で割ったものと定めています。
| 毎月見る数字 | 出し方 | 比べる相手 |
|---|---|---|
| 入庫台数 | 車検、点検、一般整備、事故整備に分けて数える | 前年同月の自社 |
| 1台あたりの工場の売上 | 法定費用を除いた売上÷入庫台数 | 前年同月の自社 |
| 技術料の割合 | 技術料÷工場の売上 | 過去6か月の自社 |
| 部品の粗利率 | (部品の売上-仕入れ値)÷部品の売上 | 過去6か月の自社 |
| 整備要員1人あたり売上 | 工場の売上÷整備要員数 | 日整連調査の専業平均 |
| 労働生産性 | (営業利益+人件費+減価償却費)÷労働者数 | 前年の自社(国交省指針の定義) |
工賃単価そのものの決め方は整備工場の工賃の決め方とレバーレート、車検の料金の組み立ては車検の料金設定と基本料金の決め方で扱っています。入庫台数を増やす方法は整備工場の集客方法にまとめました。
独立直後の整備工場の利益の残し方
独立直後の整備工場では、開業資金の返済とリースの支払いが毎月の固定費に加わるため、売上が勤め先にいた頃の感覚どおりに入っても、手元にお金が残りにくくなります。最初の1年で見ておきたいのは、毎月の固定費をまかなうのに工場の売上がいくら要るかという損益分岐の売上です。計算は、固定費を粗利率で割るだけです。例として、固定費が月50、粗利率が60%なら、損益分岐の売上は約83になります(数字は仮の値)。粗利率を上げるには工賃の割合を増やすこと、固定費を下げるには設備や車両のリースを必要な分に絞ることが効きます。日整連の調査では1事業場あたりの整備要員は4.36人ですが、経営者1人か2人で回す工場では、1人の作業時間がそのまま工場の売上の上限になります。作業以外の事務や受付の時間をどれだけ減らせるかも、利益に直結します。
開業資金の見積もりと補助金は整備工場の開業資金と補助金、独立後の収入の目安は車屋の独立は儲かるかで確認できます。
整備工場の利益率を確かめるチェックリスト
- 請求書の金額を、技術料、部品、代行手数料、法定費用に分けて集計している。
- 法定費用を売上に入れるか預り金にするかを、税理士と決めている。
- 経営者自身の給与を人件費に入れて、営業利益を計算している。
- 入庫台数を車検、点検、一般整備、事故整備に分けて数えている。
- 作業のやり直しの件数と原因を記録している。
- 値引きの理由と金額を、毎月まとめて確かめている。
- 半年以上動かない部品在庫の一覧がある。
- 損益分岐の売上を知っていて、毎月の売上と比べている。
まとめ
整備工場の利益率は、売上の総額で見るより、技術料、部品、代行手数料、法定費用に分けて見ると実態がつかめます。技術料には仕入れ原価がほとんどないため、粗利の大部分は工賃から生まれ、そこから最大の費用である人件費を払います。国土交通省の指針では、整備業の人件費対総売上高比率は25.3%です。日整連の令和7年度調査では、総整備売上高は6兆6,592億円、専業の整備要員1人あたり年間整備売上高は1,256万8千円でした。利益率を下げるのは、やり直し、待ち時間、値引き、在庫、請求漏れです。業界平均の利益率と比べる前に、自分の工場の数字を毎月同じ形で記録し、前年の自分と比べるところから始めてください。
整備工場の利益率と粗利に関するよくある質問
- 整備工場の平均的な利益率はどのくらいですか?
- 日整連が無料で公開している令和7年度の実態調査の概要には、業界平均の利益率は載っていません。整備要員10人以下の事業場の財務諸表は、日整連の「自整業の経営・給与データブック」(有料)に集計されています。公開資料で確認できる指標としては、国土交通省の指針にある人件費対総売上高比率25.3%や、日整連調査の整備要員1人あたり年間整備売上高があります。
- 車検の法定費用は売上に入れて利益率を計算しますか?
- 自動車重量税、自賠責保険料、検査手数料は、日整連の説明でも国や保険会社に納める諸費用とされ、工場の利益にはなりません。決算書でどう処理するかは税理士と決め、毎月の管理では法定費用を除いた工場の売上で利益率を見ると、車検の多い月と少ない月を比べやすくなります。
- 整備工場の粗利はどこで決まりますか?
- 技術料(工賃)には仕入れ原価がほとんどないため、粗利の大部分は工賃から生まれます。部品は売値と仕入れ値の差額、外注した作業は請求額と外注費の差額が粗利です。工賃の割合が下がると、同じ売上でも粗利は減ります。
- 整備要員1人あたりの売上の目安はありますか?
- 日整連の令和7年度調査では、整備要員1人あたり年間整備売上高は自家を除く平均で1,659万5千円、専業で1,256万8千円、ディーラーで2,564万1千円でした。小さな独立工場は専業の数字と比べると、自分の工場の位置が分かります。
- 独立したばかりの整備工場で、数字の管理はどう始めればよいですか?
- 入庫台数、売上の内訳、1台あたりの売上を毎月同じ形で記録できるのが自動車整備システム(自動車整備ソフト)です。中古車の販売もするなら、仕入れ値と整備費と売値を1台ずつ管理できる車両販売システム(車販ソフト)とデータがつながるかを確かめてください。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められて、固定費を増やしすぎないかも判断の材料になります。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。
- 日本自動車整備振興会連合会 令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要(令和8年1月30日):https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R07jittaityousa.pdf
- 日本自動車整備振興会連合会 自動車特定整備業実態調査:https://www.jaspa.or.jp/member/data/whitepaper.html
- 日本自動車整備振興会連合会 自整業の経営・給与データブック(令和7年度版):https://www.jaspa.or.jp/association/publication/book_data.html
- 日本自動車整備振興会連合会 点検整備料金のご説明(基本点検技術料):https://www.jaspa.or.jp/member/explanation/fee01_02.html
- 日本自動車整備振興会連合会 点検整備料金のご説明(諸費用):https://www.jaspa.or.jp/member/explanation/fee01_09.html
- 国土交通省 自動車整備業分野に係る経営力向上に関する指針:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001427695.pdf