認証工場は1人で開業できるか|従業員2人以上の基準と整備士1人で始める作業範囲

認証工場(自動車特定整備事業の事業場)は、整備士1人だけでは認証を受けられません。道路運送車両法施行規則第57条第6号が、事業場に「二人以上の特定整備に従事する従業員」を置くことを認証の基準にしているからです。ただし、整備士が1人で開業すること自体はできます。分解整備に当たらない点検、オイル交換、タイヤ交換などは認証がなくても仕事として受けられ、分解整備は認証工場へ外注する形で始める人もいます。この記事では、認証工場の人数の基準、1人で運営していて処分を受けた事例、認証なしで受けられる作業の範囲、1人で始めてから2人体制で認証を取るまでの段取り、そして1人工場の限界を、法令と運輸局の資料をもとに正直に整理しました。認証の条件全体は認証工場の条件一覧で詳しく説明しています。
この記事で確認した一次情報
- 道路運送車両法施行規則(e-Gov法令検索)第3条(分解整備の定義)、第57条(認証基準)、第62条の2の2(遵守事項)
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索)第78条(認証と業務範囲の限定)、第109条(無認証の罰則)
- 平成29年度 整備主任者研修 法令研修【地域教材】(関東運輸局)従業員が常時1名で事業停止になった処分事例
- 自動車整備事業者に対する行政処分等の基準(九州運輸局、令和8年4月1日改正)従業員が認証基準を満たしていない場合の違反点数
認証工場を1人で開業できない理由(施行規則第57条の人数要件)
認証工場を1人で開業できない理由は、施行規則第57条が認証の基準として従業員の人数を決めているためです。第6号は「事業場には、二人以上の特定整備に従事する従業員を有すること」と定め、第7号は分解整備を行う事業場について、少なくとも1人の一級又は二級の自動車整備士(原動機を対象にする場合は二級シャシ整備士を除く)を置き、一級から三級の整備士の数が従業員の数を4で割った数以上であることを求めています。従業員が2人から4人の工場なら、4で割った数は1以下なので、二級整備士が1人いれば第7号は満たせます。つまり最小の認証工場は「二級以上の整備士1人と、特定整備に従事するもう1人」の2人体制です。2人目は整備士の資格がなくても人数に数えられますが、実際に特定整備の作業に従事していることが前提です。整備主任者は、その事業場で特定整備に従事する一級又は二級の整備士から選び、経営者本人が自ら統括管理する形でもかまいません(第62条の2の2第1項第7号)。
| 基準 | 条文 | 2人体制の工場での満たし方 |
|---|---|---|
| 特定整備に従事する従業員が2人以上 | 施行規則第57条第6号 | 経営者と従業員1人がともに特定整備の作業に入る |
| 一級又は二級の整備士が1人以上 | 施行規則第57条第7号イ | 二級ガソリンなどの整備士が1人いる(原動機を扱うなら二級シャシのみは不可) |
| 整備士の数が従業員の4分の1以上 | 施行規則第57条第7号イ | 2人なら整備士1人で足りる |
| 整備主任者の選任 | 施行規則第62条の2の2第1項第7号 | 二級以上の整備士である経営者本人が兼ねられる。他の事業場との兼務はできない |
経営者本人を2人のうちの1人に数えられるか、家族やパートタイムの人をどう数えるかは、法令の条文には書かれていません。指定工場と優良認定の要員基準の解釈では、工員を「常時、点検、整備作業に直接従事している者」とし、一時的に雇用する者や常時作業を請け負っている者は含めないとしています(自動車整備事業の取扱い及び指導要領)。認証の申請前に、2人目の働き方を管轄の運輸支局で確かめてください。
認証工場を1人で運営して処分を受けた事例
認証を受けたあとに従業員が1人になると、その時点で認証基準を満たさない状態になり、監査で見つかれば処分の対象です。関東運輸局の平成29年度整備主任者法令研修の地域教材には、通報をきっかけに立入検査をしたところ「従業員が常時1名しかいないことが確認され、認証基準の従業員数の要件を満たしていなかった」事業場の事例が載っています。この事業場では認証を受けた作業場以外で分解整備をしていた違反も見つかり、自動車分解整備事業の停止10日間の処分を受けました。現在の基準では、九州運輸局の「自動車整備事業者に対する行政処分等の基準」(令和8年4月1日改正)が「従業員が認証基準の要件を満たしていない」を6点としています。認証事業者は合計10点以上で事業停止の対象になり、6点なら文書警告の区分です。従業員が辞めて1人になったときは、2人目を確保するまでの期間をどうするか、早めに運輸支局へ相談することが現実的な対応です。地方運輸局長は基準に適合しない事業者に改善命令を出せます(道路運送車両法第92条)。
整備士1人で開業できる作業範囲(認証が要らない整備)
整備士1人で開業する場合に受けられるのは、分解整備と電子制御装置整備に当たらない作業です。分解整備は施行規則第3条第1号から第7号に、原動機を取り外して行う整備、クラッチやトランスミッション、ドライブ・シャフトなどを取り外して行う整備、フロント・アクスルやリア・アクスル・シャフトを取り外して行う整備、かじ取り装置のギヤ・ボックスやリンク装置の連結部を取り外して行う整備、ブレーキのマスタ・シリンダ、ホース、パイプ、ブレーキ・ドラム、ディスク・ブレーキのキャリパを取り外して行う整備、シャシばね(コイルばねとトーションバー・スプリングを除く)を取り外して行う整備、連結装置を取り外して行う整備として列挙されています。これに当たらないオイルとフィルターの交換、タイヤとホイールの交換、バッテリーやワイパー、ランプ類の交換、エアコンガスの補充、点検と故障の相談などは認証なしで受けられます。反対に、認証を受けずに分解整備を業として行うと、道路運送車両法第109条第11号により50万円以下の罰金の対象です。
| 作業の例 | 認証 | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| エンジンオイル・フィルター交換、バッテリー交換 | 不要 | 施行規則第3条の列挙に当たらない |
| タイヤ交換・ローテーション | 不要 | ホイールの脱着は第3条に含まれない |
| ブレーキ・キャリパやブレーキ・ドラムを取り外す作業 | 必要 | 第3条第5号 |
| ドライブ・シャフトやフロント・アクスルを取り外す作業 | 必要 | 第3条第2号・第3号 |
| カメラ・レーダーのエーミング | 必要(電子制御装置整備) | 第3条第8号 |
どの作業が分解整備に当たるかの細かい判断は、分解整備の定義とはで装置ごとに整理しています。タイヤ交換から始める場合の設備と保管サービスはタイヤ屋の開業ガイドを参考にしてください。
1人で整備工場を回す方法(外注・予約・見積り)
1人で整備の仕事を回すには、自分で受ける作業と外へ出す作業の線を先に決め、予約と書類の仕組みで手を空けることが中心になります。分解整備が必要な修理や車検は、近くの認証工場や指定工場に外注し、自分は受付と点検、認証の要らない作業を受け持つ形が組みやすい方法です。外注先とは、部品の手配をどちらがするか、代車の扱い、請求の流れを最初に決めておきます。予約制にして1日に受ける台数を決めておけば、作業中に電話で手が止まる回数を減らせます。料金の示し方は、認証事業者に課されている遵守事項が参考になります。施行規則第62条の2の2第1項第1号は、点検や整備の料金を事業場で見やすいように掲示することを求め、常時使用する従業員が5人以下の事業場はウェブサイトへの掲載を求めていません。第2号は、必要な整備の内容と必要性を説明し、料金の概算見積りを書面か電磁的記録で渡すことを求めています。認証を取る前からこの形に慣れておくと、認証後の運営がそのまま続けられます。
- 受ける作業、外注する作業、断る作業を一覧にして、店頭とホームページに出す
- 外注先の認証工場とは、部品手配、代車、請求の流れを書面で決める
- 1日の受付台数と作業時間の枠を決め、飛び込みは枠の空きで受ける
- 見積りは作業前に書面で渡し、追加の作業は連絡してから行う
2人体制で認証工場を取るまでの段取り
1人で始めて2人体制で認証工場を取るまでは、人の確保、作業場の確保、申請の順に進めます。人については、家族が作業に入るのか、2人目を雇うのかを決めます。2人目は整備士でなくても人数に数えられますが、特定整備の作業に常に従事できる働き方であることが前提です。採用の進め方は自動車整備士の求人に応募が来ない理由と採用単価の下げ方で扱っています。作業場は、対象とする車種で必要な寸法が変わります。道路運送車両法第78条第2項は、対象とする自動車の種類を指定し、業務の範囲を限定して認証できると定めており、たとえば軽自動車に絞れば、原動機を含む分解整備でも車両整備作業場は間口3.5メートル以上、奥行5メートル以上で足ります(施行規則別表第四)。申請書類と流れは認証工場の取得方法と流れにまとめています。認証を取ったあとは、整備主任者の選任届と毎年度の研修が続きます。研修の受け方は整備主任者講習(研修)とはをご覧ください。
- 1人の期間に受ける作業と外注先を決め、顧客と車両の記録を取り始める
- 2人目の働き方(家族、正社員、パート)を決め、人数に数えられるか運輸支局に確かめる
- 対象車種を決め、別表第四の寸法を満たす作業場と工具をそろえる
- 認証を申請し、整備主任者を選任して届け出る
1人工場の限界と向いている人
1人で整備の仕事をする形には、売上の上限と休めないことという2つの限界があります。売上は自分の作業時間で頭打ちになります。日本自動車整備振興会連合会の令和7年度自動車特定整備業実態調査では、整備要員1人あたりの年間整備売上高は専・兼業で1,253万7千円でした。これは認証工場を含む整備事業場の平均で、1人で認証の要らない作業だけを受ける場合は、車検や分解整備の売上が入らない分、この数字より低くなると考えるのが自然です。もう1つは、病気やけが、家庭の事情で休むと店がそのまま止まることです。認証を取ったあとは整備主任者の技術研修で1日、法令研修で半日ほど工場を空ける日もあります。リフトで車を上げる作業を1人で行うときは、声をかけられる人がいない分、安全の手順を自分で決めて守る必要があります。こうした限界を知ったうえで、まずは固定費を小さく始め、顧客が付いてから2人目を迎えたい人や、外注先との関係をすでに持っている人には、1人で始める形が合っています。
認証工場の1人開業に関するよくある質問
- 二級整備士の資格があれば、1人で認証工場を開けますか?
- 開けません。施行規則第57条第6号は、特定整備に従事する従業員を2人以上置くことを認証の基準にしています。二級整備士は第7号の「少なくとも一人」の要件と整備主任者の要件を満たせますが、もう1人、特定整備に従事する人が必要です。
- 2人目は整備士の資格が必要ですか?
- 従業員が2人から4人の工場なら、一級又は二級の整備士が1人いれば、整備士の数が従業員の4分の1以上という第7号の基準も満たせます。2人目は資格がなくても人数に数えられますが、特定整備の作業に従事していることが前提です。
- 認証を取ったあと従業員が辞めて1人になったらどうなりますか?
- 認証基準を満たさない状態になります。九州運輸局の処分基準では「従業員が認証基準の要件を満たしていない」は6点で、関東運輸局の資料には従業員が常時1名だったことなどで事業停止10日間となった事例があります。2人目を確保するまでの対応を、早めに運輸支局へ相談してください。
- 認証がない期間に車検の仕事は受けられますか?
- 点検や車検の受付をして、分解整備と検査を認証工場や指定工場に外注する形なら受けられます。認証のないまま自分で分解整備はできず、無認証で分解整備を業として行うと50万円以下の罰金の対象です(道路運送車両法第109条第11号)。
- 1人で受付も作業も回すとき、記録や見積りはどう管理しますか?
- 顧客と車両、見積り、請求、次回の点検時期を1か所で管理できる自動車整備ソフトを使うと、作業中に書類を探す時間が減ります。1人の工場は固定費を増やしにくいので、整備ソフト 安いものを探すときも、整備システム リースなしで始められるか、2人体制や認証取得後もそのまま使えるかを見ておくと、買い替えの手間を避けられます。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月24日確認)。
- e-Gov法令検索 道路運送車両法施行規則(第3条、第57条、第62条の2の2、別表第四):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
- e-Gov法令検索 道路運送車両法(第78条、第92条、第109条):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 関東運輸局 平成29年度 整備主任者研修 法令研修【地域教材】:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000107161.pdf
- 九州運輸局 自動車整備事業者に対する行政処分等の基準(令和8年4月1日改正):https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/content/000372205.pdf
- 近畿運輸局 自動車整備事業の取扱い及び指導要領について(依命通達)(抜粋):https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000380490.pdf
- 日本自動車整備振興会連合会 令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要(令和8年1月30日):https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R07jittaityousa.pdf