認証工場から指定工場になるには|申請の流れ・必要書類・審査期間

認証工場として独立し、車検のたびに車を検査場へ運んでいると、自分の工場で車検を完結できる指定工場が次の目標に見えてきます。この記事では、認証工場から指定工場になるには何をどの順番で進めればよいかを、国土交通省の案内、指定自動車整備事業規則、自動車整備振興会の資料で確認します。申請の流れ、申請書の記載事項と添付書面、運輸支局と地方運輸局の審査、申請後約45日という審査期間、そして申請前に整えておく管理規程や記録簿の記載練習、車検実績、自動車検査員の確保を順に整理しました。最後に、独立したばかりの小さな工場が段階を踏んで指定を目指す道筋もまとめています。
この記事で確認した一次情報
- 指定自動車整備事業制度について(国土交通省)指定の要件、申請先、審査の流れ、申請後約45日
- 指定自動車整備事業規則 第1条〜第5条、第16条(e-Gov法令検索)申請書の記載事項、添付書面、提出の経由
- 指定自動車整備事業の概要(自動車整備振興会資料)指定取得までのフローチャート、審査の基準
指定工場になるには(指定自動車整備事業の指定の前提)
指定工場になるには、自動車特定整備事業の認証を受けた事業場が、地方運輸局長から指定自動車整備事業の指定を受ける必要があります。国土交通省の「指定自動車整備事業制度について」は、指定の前提として、認証を受けていること、優良自動車整備事業者認定規則で定める設備と技術と管理組織を有すること、指定自動車整備事業規則で定める自動車の検査の設備を有すること、自動車検査員を選任していることを挙げています。指定は会社単位で一括して受けるものでなく、設備と技術と管理組織を備えた事業場ごとに受けます。つまり、まず認証工場であることが出発点で、そのうえに人と設備と社内体制を積み増していく形です。認証をまだ取っていない段階なら、先に認証工場の取得方法から進めます。
| 指定の前提 | 根拠と中身 |
|---|---|
| 自動車特定整備事業の認証 | 道路運送車両法第94条の2により、認証を受けた事業場であることが前提です。 |
| 設備、技術、管理組織 | 優良自動車整備事業者認定規則で定める基準に適合している必要があります。 |
| 自動車の検査の設備 | 指定自動車整備事業規則第2条の屋内作業場と検査用機械器具を備えます。 |
| 自動車検査員の選任 | 指定規則第4条の要件を満たす人を事業場ごとに選任します。 |
工員数や作業場の面積、検査機器の種類といった条件の中身は指定工場の条件一覧で詳しく扱っています。認証工場と指定工場で何ができるかの比較は認証工場と指定工場の違いをご覧ください。
指定工場の申請までの流れ(振興会資料のフローチャート)
指定工場の申請までの流れは、振興会への相談から始まり、社内の見直しと練習を経て申請書を出し、現地の確認と審査を受けて指定に至る12の段階に分かれます。自動車整備振興会がまとめた「指定自動車整備事業の概要」のフローチャートでは、指定取得のための相談、概要と要件の説明会、認証関係業務全般の見直し、指定要件への適合性の確認、指定自動車整備事業管理規程等の作成と周知が前半に並びます。続いて、受入点検から完成検査までの実技練習と、指定整備記録簿と保安基準適合証等の記載練習を並行して行い、指定自動車整備事業全般の理解へ進みます。申請書を作るのはその後で、振興会による現地指導と現地調査、運輸支局での申請書受付、支局の現地確認と現地審査、運輸局の審査を経て指定となります。書類を作る前の準備段階が全体の半分を占めている点に注目してください。
| 段階 | フローチャートの項目 | 工場側でやること |
|---|---|---|
| 1 | 指定取得のための相談 | 所属する振興会に、指定を目指していることを伝えます。 |
| 2 | 概要及び要件等説明会 | 制度と要件の説明を受け、足りないものを洗い出します。 |
| 3 | 認証関係業務全般の見直し | 認証工場としての記録簿、標識、料金表などを点検します。 |
| 4 | 指定要件への適合性の確認 | 工員数、面積、検査設備、車検実績を基準と照らします。 |
| 5 | 管理規程等の作成及び周知 | 指定自動車整備事業管理規程を作り、従業員に伝えます。 |
| 6 | 実技練習と記載練習 | 受入点検から完成検査までの手順と、記録簿と適合証の書き方を練習します。 |
| 7 | 指定自動車整備事業全般の理解 | 事業場全体で業務の流れを理解します。 |
| 8 | 申請書の作成 | 申請書と添付書面をそろえます。 |
| 9 | 現地指導及び現地調査 | 振興会の指導と調査を受けます。 |
| 10 | 支局申請書受付 | 管轄の運輸支局に申請書を出します。 |
| 11 | 支局現地確認、支局現地審査 | 運輸支局が事業場の現況を確かめます。 |
| 12 | 運輸局審査、指定 | 地方運輸局の審査を経て指定を受けます。 |
フローチャートは振興会の資料です。説明会の時期や現地指導のやり方は地域の振興会によって違う場合があるので、最初の相談で段取りを確認しておくと手戻りが減ります。
指定工場の申請書の記載事項と添付書面
指定工場の申請書は、指定自動車整備事業規則第1条が記載事項と添付書面を定めています。申請書に書くのは、申請者の氏名又は名称と住所、事業場の名称と所在地、認証を受けた自動車特定整備事業の種類と認証番号です。対象とする自動車の種類の指定など業務の範囲の限定を受けている、又は受けようとする場合はその内容も書きます。優良自動車整備事業者の認定を受けている場合は認定の種類と番号を書き、受けていない場合は、実施している整備作業の範囲、事業場管理責任者と主任技術者の氏名と略歴、工員の構成と技能程度を書き加えます。同規則第16条により、申請書は正副2通を、事業場の所在地を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長を経由して地方運輸局長に提出します。添付書面は次の表のとおりで、優良認定を受けていない工場ほど用意する書類が増えます。
| 添付書面(指定規則第1条第2項) | 対象 |
|---|---|
| 欠格事由に該当しないことを示す書面 | 全員 |
| 検査をする場所と屋内作業場の位置、面積、検査用機械器具の配置を書いた平面図 | 全員 |
| 検査用機械器具の名称、型式、数と、基準に適合することを示す書面 | 全員 |
| 自動車検査員に選任する人の氏名、要件に当たることを書いた書面、本人の同意書 | 全員 |
| 共用設備の管理責任者と維持管理体制、共同使用者の最近3か月の月平均車種別整備実績、契約書の写し、附置された車両置場 | 検査の設備を共同使用する場合 |
| 整備用の主要な設備と機器、事業場の平面図、最近3か月の月平均車種別整備実績、貸借対照表と損益計算書 | 優良認定を受けていない場合 |
行政処分等の基準には、優良認定規則の基準に関わる違反事項として「健全な経営でない」が挙がっており、経営の状態は指定後も見られる項目です。開業して間もない工場は、決算を一度も迎えていない段階での申請が現実的かどうかも含めて、振興会に相談しておくと安心です。
指定工場の審査と申請後約45日の審査期間
指定工場の審査は、運輸支局での形式審査と地方運輸局での内容審査の2段階で進み、国土交通省は指定の決定までを申請後約45日と案内しています。申請書を受け付けた運輸支局は、書類の形式がそろっているかを確認します。そのうえで地方運輸局が中身を審査し、指定を決定します。振興会のフローチャートでは、支局での受付のあとに支局の現地確認と現地審査が入っているので、書類だけで終わる手続きと考えないほうがよいでしょう。約45日は申請書を出してからの目安で、説明会、管理規程の作成、実技練習といった申請前の準備期間は含まれていません。準備にどれだけかかるかは、今の工場の人員や設備がどこまで基準に近いかで変わります。開業準備や車検の予約の組み方を指定の時期に合わせたい場合は、申請日から逆算するより、準備の進み具合を振興会と確認しながら申請日を決めるほうが確実です。
指定工場の申請前に整える管理規程と記録簿の記載練習
指定工場の申請前に整える社内の仕組みの中心は、指定自動車整備事業管理規程と、指定整備記録簿や保安基準適合証の正しい書き方です。振興会のフローチャートは、管理規程等の作成と周知を申請書の作成より前に置いています。日本自動車整備振興会連合会の「指定整備事業適正運営マニュアル」(平成24年7月)に載っている点検票の例を見ると、管理規程が実態に即していて担当者がその中身を理解しているか、保安基準適合証の交付権限が事業場管理責任者と代務者に明確に委任されているか、といった項目が並んでいます。規程を作って棚にしまうだけでは足りず、従業員が規程どおりに動けるかまで問われるということです。記録簿の様式は指定規則第10条の2で定められており、普通自動車や検査対象軽自動車などは第3号様式、二輪の小型自動車は第4号様式です。受入点検から完成検査、記録簿と適合証の記入までを一続きで練習しておくと、指定後の監査で指摘されやすい記載漏れを減らせます。
- 管理規程に、適合証の交付権限、検査用機械器具の管理責任者、始業点検のやり方を書いたか。
- 組織図が最新で、事業場管理責任者、主任技術者、自動車検査員の名前が実態と合っているか。
- 受入点検から完成検査までの流れを、検査を担当する人と整備を担当する人に分けて練習したか。
- 指定整備記録簿の様式を車種で使い分け、記入例どおりに書けるか。
指定工場の申請に向けた車検実績と自動車検査員の確保
指定工場の申請に向けては、認証工場の段階で一定の車検実績を積み、自動車検査員になれる人を確保しておく必要があります。振興会資料の審査の基準では、月平均の車検持込台数が、最近2か月なら30台以上、3か月なら20台以上、4か月なら15台以上、5か月なら12台以上、6か月なら10台以上のいずれかを満たし、再検台数が車検持込総数の3%以下であることが原則とされています。この台数は振興会資料にある運用の例なので、実際の扱いは管轄の運輸支局と振興会で確認してください。自動車検査員は、指定規則第4条により、整備主任者として1年以上(1級整備士は6か月以上)の実務経験があり、適切に業務を行っていた人で、地方運輸局長が行う教習を修了した人などから選任します。2級シャシ整備士だけに合格している人は、この整備主任者経験の要件から外れます。選任したら、道路運送車両法第94条の4第3項により15日以内に地方運輸局長へ届け出ます。
| 実績を見る期間 | 月平均車検持込台数(振興会資料の例) |
|---|---|
| 最近2か月 | 30台以上 |
| 最近3か月 | 20台以上 |
| 最近4か月 | 15台以上 |
| 最近5か月 | 12台以上 |
| 最近6か月 | 10台以上 |
再検台数が3%以下という条件は、持ち込んだ車がその場で合格しているかを見るものです。認証工場の時期の持込検査は、指定を受けるための練習期間でもあります。教習の受け方や試験の中身は自動車検査員になるには、整備主任者の要件は整備主任者になるにはで確認できます。
独立した小さな工場が指定工場を目指す道筋
独立したばかりの小さな工場が指定工場を目指すなら、認証の取得、車検実績の積み上げ、人の確保、検査設備の用意という順番で段階的に進めるのが現実的です。国土交通省の案内では、工員は4人以上(大型車を扱う場合は条件により5人以上)で、そのうち3分の1以上が自動車整備士の資格を持っている必要があります。1人や2人で開業した工場は、この人数の条件をそのままでは満たせません。まずは認証工場として車検の持込みを続け、実績と顧客を増やしながら、整備主任者として1年以上の経験を積む人を育てます。検査設備は自前で一式そろえる方法のほか、指定規則第3条の要件を満たせば、複数の事業場で共同使用する方法もあります。機器の価格は機種やライン構成で大きく変わるので、必要な機器の一覧をもとに複数の業者から見積を取って比べてください。どの段階まで来ているかを振興会に伝えておくと、説明会や現地指導の時期を合わせやすくなります。
| 段階 | 目安になる到達点 | 関連する記事 |
|---|---|---|
| 開業 | 認証を取得し、持込検査で車検を受け始めます。 | 整備士の独立開業 |
| 実績づくり | 月平均の車検台数と再検率を毎月記録します。 | 本記事の車検実績の表 |
| 人の確保 | 工員を4人以上に増やし、検査員の候補を育てます。 | 本記事の検査員の節 |
| 設備 | 完成検査場と検査用機械器具を自前か共同使用で用意します。 | 指定工場の条件一覧 |
| 申請 | 管理規程と練習を終え、振興会の指導を受けて申請します。 | 本記事の申請の流れ |
指定を受けたあとは、設備と人員を基準どおりに保つ義務と監査が続きます。指定後の負担を先に知っておきたい方は指定工場の監査と行政処分と指定工場のメリット・デメリットもあわせて読んでください。
指定工場の申請前チェックリスト
申請書を作り始める前に、次の項目を一つずつ確かめておくと、現地調査や審査で慌てずに済みます。
- 認証の種類と認証番号、業務の範囲の限定の有無を認証書類で確認した。
- 工員数と整備士の割合が基準を満たし、組織図に反映されている。
- 自動車検査員に選任する人が指定規則第4条の要件を満たし、同意書を用意できる。
- 検査をする屋内作業場と検査用機械器具の配置を平面図に描ける。
- 検査用機械器具の名称、型式、数と、基準適合を示す書面がそろっている。
- 優良認定を受けていない場合、最近3か月の月平均車種別整備実績と決算書類を出せる。
- 管理規程を作成して周知し、記録簿と適合証の記載練習を終えた。
まとめ
認証工場から指定工場になるには、認証を土台に、優良認定規則の設備と技術と管理組織、指定規則の検査の設備、自動車検査員の選任をそろえ、事業場ごとに地方運輸局長の指定を受けます。振興会資料のフローチャートでは、相談から指定まで12の段階があり、申請書の作成より前に、業務の見直し、管理規程の作成、実技と記載の練習が置かれています。申請書は指定規則第1条の記載事項と添付書面をそろえ、正副2通を運輸支局経由で出します。審査は支局の形式審査と運輸局の内容審査で、指定の決定までは申請後約45日が国の目安です。小さな工場は、車検実績と人を少しずつ積み上げ、検査設備の共同使用も選択肢に入れて、自分の工場に合った時期を振興会と一緒に見極めてください。
指定工場になるには、に関するよくある質問
- 指定工場の申請書はどこに出しますか?
- 事業場を管轄する運輸支局(運輸監理部)に提出します。指定自動車整備事業規則第16条により、申請書は正副2通を運輸監理部長又は運輸支局長を経由して地方運輸局長に提出する形です。国土交通省の案内では、運輸支局で形式審査、地方運輸局で内容審査が行われます。
- 指定工場の申請から指定までどのくらいかかりますか?
- 国土交通省は、指定の決定までを申請後約45日と案内しています。これは申請書を出してからの目安で、説明会への参加、管理規程の作成、実技と記載の練習など、申請前の準備にかかる期間は含まれていません。
- 優良認定を受けていなくても指定工場になれますか?
- なれます。指定の要件は、優良自動車整備事業者認定規則で定める設備と技術と管理組織を有することで、認定そのものを受けていることではありません。ただし、認定を受けていない場合は、整備作業の範囲、事業場管理責任者と主任技術者の略歴、工員の構成を申請書に書き、決算書類などの添付書面も追加で出すよう指定規則第1条が定めています。
- 車検実績はどのくらい必要ですか?
- 振興会資料の審査の基準では、月平均車検持込台数が最近6か月なら10台以上、最近2か月なら30台以上など、期間ごとの台数のいずれかを満たし、再検台数が持込総数の3%以下であることが原則とされています。運用の基準なので、管轄の運輸支局と振興会で確認してください。
- 指定工場を目指す工場は、車検や整備の記録をどう管理すればよいですか?
- 指定の審査では、最近の月平均車検持込台数や車種別整備実績を書面で示すため、日々の入庫と車検の記録を正確に残しておくことが前提になります。紙の台帳で始めることもできますが、自動車整備システム(自動車整備ソフト)を使えば、車検台数や整備記録の集計を後から出しやすくなります。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかに加えて、整備システム リースなしで導入できるか、指定整備記録簿の作成に対応しているかも確かめてください。中古車も扱うなら、車両販売システム(車販ソフト)と顧客情報がつながるかも選ぶときの材料になります。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。
- 国土交通省 指定自動車整備事業制度について:https://www.mlit.go.jp/jidosha/shiteiseibi.html
- 指定自動車整備事業規則(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/337M50000800049
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 指定自動車整備事業の概要(自動車整備振興会資料):https://www.g-oasis.jp/pdf/spec_cert/spec_cert_02.pdf
- 関東運輸局 指定工場の基準:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000163110.pdf
- 日本自動車整備振興会連合会 指定整備事業適正運営マニュアル(平成24年7月)