代行車検(車検代行)とは|資格は要るか、認証と行政書士法の線引きと開業の始め方

代行車検(車検代行)とは、車の使用者に代わって、車を運輸支局や軽自動車検査協会の検査場へ持ち込み、継続検査を受けてくる仕事です。ユーザー車検を代わりに行う形が基本で、整備は最小限か、別の工場に任せます。独立を考える整備士にとっては、工場を持たずに始められる入口の一つに見えますが、どこまでが資格なしでできて、どこからが認証や別の国家資格の領分になるかを知らないまま始めると、法令違反になるおそれがあります。この記事では、道路運送車両法と行政書士法の条文、2026年4月1日改定の検査手数料を確かめながら、車検代行と認証工場・指定工場の車検の違い、代行業でできること・できないこと、開業するときの段取りを整理します。
この記事で確認した一次情報
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索)第48条(定期点検整備)、第62条(継続検査)、第78条(認証)、第109条(罰則)
- 行政書士法(e-Gov法令検索)第1条の3(業務)、第19条(業務の制限)、第21条の2(罰則)
- 行政書士法施行規則の一部を改正する省令について(総務省)OSSによる継続検査の電子申請の扱い
- 検査登録手数料の改定(国土交通省)2026年4月1日からの持込検査の手数料
代行車検(車検代行)とは
代行車検(車検代行)とは、車の使用者から依頼を受けて、運輸支局や軽自動車検査協会の検査コースへ車を持ち込み、継続検査を受ける手続きを代わりに行うサービスです。道路運送車両法第62条は、車検証の有効期間が切れた後も車を使う使用者に、車を提示して継続検査を受けるよう定めています。本来は使用者が自分で行う手続きで、使用者本人が持ち込む形をユーザー車検、それを業者が代わりに行う形を車検代行と呼んでいます。国に納める検査手数料は、国土交通省の改定資料によると2026年4月1日から、持ち込みの継続検査で普通自動車2,600円、小型自動車2,500円です。車検代行の業者は、この手数料と自動車重量税、自賠責保険料に、自社の代行料を上乗せしてお客様に請求します。整備は、検査の後に行う「前検査後整備」の形をとるか、提携する認証工場に任せる形があり、点検整備そのものを代行業者が手がける場合は、作業の中身によって認証が要るかどうかが分かれます。
車検代行という言葉は、整備工場が受ける車検全般を指して使われることもあります。この記事では、整備工場を持たない事業者が検査場への持ち込みを請け負う形を「車検代行」として扱います。
車検代行と認証工場・指定工場の車検の違い
車検代行と整備工場の車検の違いは、点検整備をどこまで自社で行えるかと、検査を誰が行うかの2点です。認証工場は、分解整備や電子制御装置整備を含む点検整備を自社の作業場で行い、検査は運輸支局の検査場で受けます。指定工場(民間車検場)は、整備に加えて自社の自動車検査員が検査をし、保安基準適合証を交付するので、車を検査場に持ち込みません。車検代行は、認証を受けていないため分解整備を事業として行えず、検査も国の検査場で受けます。使用者には道路運送車両法第48条で定期点検の義務があり、自家用乗用車なら1年ごとの点検が必要です。車検代行で検査に通っても、その義務は別に残るため、点検をいつ誰が行うかをお客様に説明する責任があります。検査に通ることと、整備が行き届いていることは別の話で、その差を埋める段取りが代行業の信用を左右します。
| 項目 | 車検代行 | 認証工場 | 指定工場(民間車検場) |
|---|---|---|---|
| 分解整備(特定整備) | 事業としては不可 | 可 | 可 |
| 検査をする場所 | 運輸支局等の検査場 | 運輸支局等の検査場 | 自社の検査ライン |
| 車の持ち込み | 必要 | 必要 | 不要 |
| 継続検査手数料(普通自動車) | 2,600円 | 2,600円 | 窓口2,100円、OSS1,850円 |
| 国の認証・指定 | なし | 地方運輸局長の認証 | 認証に加えて指定 |
認証工場と指定工場の違いは認証工場と指定工場の違い、指定工場の仕組みは民間車検場とはで詳しく説明しています。
車検代行に資格は要るか(分解整備と認証)
車検代行そのものに、国家資格や国の許可の決まりはありません。車を検査場へ運転して持ち込み、検査コースを通すだけなら、自動車整備士の資格がなくても行えます。資格や認証が問題になるのは、点検整備の中身です。道路運送車両法第78条は、自動車特定整備事業を経営しようとする者は、事業場ごとに地方運輸局長の認証を受けなければならないと定めています。特定整備とは、施行規則第3条で定める分解整備(原動機、動力伝達装置、走行装置、かじ取り装置、制動装置、緩衝装置、連結装置の取り外しを伴う整備)と、電子制御装置整備のことです。たとえばブレーキのディスク・キャリパを取り外してパッドを交換する作業は分解整備に当たります。認証を受けずに自動車特定整備事業を経営すると、同法第109条により50万円以下の罰金の対象です。一方で、灯火類の交換、ワイパーゴムの交換、オイル交換のように特定整備に当たらない作業は、認証がなくても事業として行えます。
分解整備に当たる作業と当たらない作業の境目は、分解整備の定義とはで施行規則第3条の装置ごとに整理しています。迷う作業は、管轄の運輸支局か整備振興会に確かめてから受けてください。
車検代行の書類作成と行政書士法
車検代行で注意したいもう一つの線引きは、検査の申請書類を誰が作るかです。行政書士法第1条の3は、他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)を作成することを行政書士の業務とし、第19条は、行政書士でない者が他人の依頼を受けて報酬を得て、業としてこの業務を行うことを禁じています。2026年1月1日に施行された改正で、第19条には「いかなる名目によるかを問わず」という文言が入り、代行料や手数料といった名目でも報酬に当たり得ることが条文上はっきりしました。違反した場合の罰則は、第21条の2で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。同条にはただし書があり、総務省の資料によると、保安基準適合証による登録自動車の継続検査をOSSで電子申請する手続きなどについて、日本自動車販売協会連合会と日本自動車整備振興会連合会が電磁的記録を作成する場合を例外として、行政書士法施行規則で指定しています。整備工場を持たない車検代行の業者が、報酬を得てお客様の継続検査申請書を作るときにこの例外がそのまま当てはまるとは限らないため、開業前に管轄の都道府県の行政書士会に確認するか、書類の作成は行政書士と組む形を考えてください。
申請書の記入をお客様ご自身にお願いし、業者は車の運転と検査コースでの立ち会いだけを請け負う形にするなど、業務の切り分け方で扱いが変わります。どの形なら問題がないかは個別の判断になるので、自己判断で済ませずに確認を取ることが、長く続ける上での安全策です。
車検代行でできること・できないこと
車検代行でできることとできないことは、道路運送車両法の認証と行政書士法の2つの物差しで分けると整理しやすくなります。できることは、検査場の予約、検査場への車の運転と持ち込み、検査コースでの立ち会い、特定整備に当たらない軽い整備や点検、法定費用の立て替えと精算、提携する認証工場への整備の取り次ぎです。認証がなければできないことは、ブレーキのキャリパやドライブ・シャフトを外すような分解整備と、カメラやレーダーの取り外しや機能調整を伴う電子制御装置整備を、事業として行うことです。行政書士でなければ原則としてできないことは、報酬を得て他人の検査申請書類を作成することです。保安基準適合証の交付は指定工場だけに認められた仕組みで、車検代行の業者や認証工場は交付できません。
| 区分 | 作業・手続きの例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 資格なしでできる | 検査場の予約、車の持ち込み、立ち会い、ワイパーゴムや電球の交換 | 特定整備に当たらない |
| 認証が要る | ブレーキ・キャリパの取り外し、緩衝装置のシャシばね(コイルばねとトーションバー・スプリングを除く)の取り外しなどの分解整備 | 道路運送車両法第78条、施行規則第3条 |
| 行政書士の業務 | 報酬を得て他人の検査申請書類を作成すること | 行政書士法第1条の3、第19条 |
| 指定工場だけ | 保安基準適合証・標章の交付 | 道路運送車両法第94条の5 |
車検代行で開業するときの始め方
車検代行で開業するときは、まず「整備をどこで誰が行うか」を決めてから、料金と書類の扱いを組み立てます。整備士の資格を持っていても、認証を受けた作業場がなければ分解整備は事業として行えないため、分解整備が必要な車は提携する認証工場に任せることになります。提携先と、作業の範囲、費用の分け方、点検整備記録簿を誰が書くかを契約で決めておくと、お客様からの問い合わせにも答えやすくなります。書類の作成については前の節のとおり、行政書士会への確認か、行政書士との提携を先に済ませます。開業の届出としては、個人で始めるなら税務署への開業届、法人なら設立登記があり、検査場までお客様の車を運転するので、預かった車を運転中の事故に備える保険も確認が要ります。保険の考え方は受託者賠償責任保険と整備工場の保険にまとめています。
車検代行で経験とお客様を積み、いずれ認証工場として独立する道もあります。作業場の面積や工具の基準は認証工場の条件一覧、独立の全体の流れは整備士が独立・開業する方法で確認できます。認証を取った後の車検の値決めは車検の料金設定と基本料金の決め方が参考になります。
代行車検・車検代行に関するよくある質問
- 車検代行を始めるのに資格は要りますか?
- 車を検査場へ持ち込んで検査を受ける部分には、資格や国の許可の決まりはありません。ただし分解整備を事業として行うには、道路運送車両法第78条の認証が要ります。報酬を得て他人の検査申請書類を作る部分は、行政書士法との関係を管轄の行政書士会に確認してください。
- 代行車検とユーザー車検は何が違いますか?
- どちらも運輸支局などの検査場に車を持ち込む継続検査です。使用者本人が行うのがユーザー車検、業者が使用者に代わって行うのが代行車検(車検代行)です。国に納める検査手数料は同じで、2026年4月1日からは普通自動車2,600円、小型自動車2,500円です。
- 車検代行で検査に通れば、定期点検はしなくてよいですか?
- しなくてよいことにはなりません。定期点検は道路運送車両法第48条で使用者に義務づけられたもので、継続検査とは別の決まりです。検査の前後にいつ点検整備を行うかを、お客様と決めておく必要があります。
- 整備士の資格があれば、車検代行でブレーキの分解整備をしてもよいですか?
- 整備士の資格は個人の技能の証明で、事業として分解整備を行うには事業場ごとの認証が別に必要です。認証を受けていない作業場で、他人の車の分解整備を事業として請け負うのは認証がないと違法です。
- 車検代行から整備工場に広げるとき、管理の仕組みはどう選べばよいですか?
- お客様と車両の情報、車検の満了日、整備と請求の記録を1台ずつ残せる自動車整備システム(自動車整備ソフト)を早めに用意すると、認証を取った後もそのまま使えます。整備ソフト おすすめや整備ソフト 安いといった情報を見るときは、車検案内と見積・請求がつながるかを確かめてください。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月24日確認)。
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 道路運送車両法施行規則(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
- 行政書士法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004
- 総務省 行政書士法施行規則の一部を改正する省令について(平成29年):https://www.soumu.go.jp/main_content/000477114.pdf
- 総務省 行政書士法施行規則の一部を改正する省令について(令和6年):https://www.soumu.go.jp/main_content/000949741.pdf
- 国土交通省 検査登録手数料の改定(2026年4月1日):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001986066.pdf